「時代の流れには勝てませんね・・・。昔はこの辺りも人の流れがあってねぇ、それなりに賑わっていたものですよ。」
老人がポツリとこぼした言葉。
2010年3月末に閉鎖された花月園競輪場から歩く事10~15分に位置するとある喫茶店。
ドアを開けるなりいきなり昭和にタイムスリップした錯覚に襲われる、なんとも不思議な空間がそこにはあった。
客は私一人。
気持ちスプリングが飛び出した、少々くたびれたソファーに腰掛け、コーヒーを注文。
私一人だけの店内。
テーブルとソファーの配置が普通の喫茶店と違う事に気付いた。
「このお店ってテーブルや椅子の並び方が違いますね?」
「分かるかい?」
「ええ、なんかコンサートや映画でも観る雰囲気ですよね」
「そう言っていただけると嬉しいねぇ。。都内なんかと比較されちゃ困るけど、昔は、名曲喫茶みたいな店だったよ。それなりにクラシック好きが集まってくれたもんだよ」
確かに、壁には年代モノであろう豪華な装飾を纏ったスピーカーが置かれていた。
「その頃からテーブル・椅子の配置は変えてないんだよ。さすがに壁紙は何度もやり直したけどね」
「私は名曲喫茶がどんなものかも分かりませんが、この雰囲気嫌いじゃないですよ」
「ありがとう。ところで、お客さんは音楽とか好きかい?」
「クラシック音楽の奥深さは分かりませんが、音楽は大好きです」
「なら、少しだけ年寄りのワガママに付き合ってくれると嬉しいのだが・・・」
そう言ってカウンター横にあるレコード棚の扉を開け、一枚のレコードを取り出した。
その様は、生まれたばかりの我が子を愛しむかの様に優しく抱きかかえる様にも見えた。
「このレコードはね、私の一番のお気に入りなんだよ。暫らく針を落としていないからちゃんと鳴ってくれるかどうか・・・」
そっと、優しく、、願いを込めて針を落とす。
レコード盤ならではの味のあるノイズ音。
「時代の流れには勝てませんね・・・。昔はこの辺りも人の流れがあってねぇ、それなりに賑わっていたものですよ。今の時代、やれインターネットだなんだと速さ・早さばかりを追求する。便利さ故の不便って事を理解しているのかね・・・?」
ノイズ交じりのヴァイオリンとピアノの音色。
そして、老人が発した言葉。
ほろ苦いコーヒーではあったが、気持ちのどこかで救われる味わいであった事は紛れも無い事実であった。
店の外は、平成の今。
ちょっとは足踏みしてもいいんじゃない?
今回のお話は、2010年3月末に閉鎖された花月園競輪場近くにあります喫茶店の話。
今でも有るのかどうなのかは不明ではありますが。。
かれこれ、3年位前のお話です。
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