遠山競輪研究所

121期デビュー後の初期成績予測( 2022/04/28 )

今年の新人121期も7月の本格デビューの前に、4月30日~6月13日の間に4戦開催される「ルーキーシリーズ」でプレデビューします。
その前の分析として、昨年の新人119期のデビュー期成績のまとめと、今年の新人121期についてデビュー後の初期成績(G指数値および競走得点)の予測を行いました。ご参照ください。

以下目次項目

1. 昨年新人(119期)のデビュー期成績まとめ

昨年デビューした119期のデビュー期成績を下にまとめました。

  • 対象選手:119期 70人
  • 対象期間:デビュー期(2021年7月~12月)
    ※ 半年遅れのデビューとなった邊見光輝選手については 2022年1月~3月を対象とした。
  • 総レース数(延べ数):2,382個 (内訳:チャレンジ戦 2,124個、A12班戦 206個、S級戦 52個)
1-1. 競走得点、勝率・連対率、および 特昇人数・優勝回数

表1-1に119期全体としてのデビュー期の平均競走得点,勝率・連対率,特別昇班・特別昇級した選手数,各クラスでの優勝回数を集計しました。
比較参考として、過去5年分の新人デビュー期成績も併記しました。
競走得点,勝率・連対率とも117期が過去最高だったのですが、119期は競走得点こそ及ばなかったものの、デビュー期の勝率・連対率は過去最高を更新しました。
チャレンジ戦の優勝164回は過去最高を記録し、デビュー期内のA2班への特別昇班者数19人も117期に次ぐ多さとなりました。
また119期はデビュー期内にS級まで昇格した選手が4人おり、S級優勝も延べ4回を達成しました。

表1-1. デビュー期の競走得点、勝率・連対率、および 特昇人数・優勝回数
卒業期119期(70人)117期(72人)115期(69人)113期(68人)111期(61人)109期(50人)
全選手の平均競走得点78.5479.6178.0076.4876.2576.89
全選手の勝率・連対率54.7% 71.3%53.4% 70.0%49.3% 67.8%47.3% 63.2%46.4% 62.1%42.7% 60.0%
チャレンジ戦勝率・連対率54.3% 71.0%50.1% 67.9%48.8% 67.5%46.0% 62.3%45.3% 61.5%41.1% 58.8%
優勝回数164回152回150回135回130回89回
A12班戦A2特別昇班数19人23人16人12人13人15人
勝率・連対率61.2% 78.2%69.4% 80.5%72.0% 81.4%59.8% 69.8%54.2% 69.2%56.4% 68.0%
優勝回数24回50回16回18回20回23回
S級戦S2特別昇級数4人4人4人1人2人2人
出走数-1着-2着52 - 24 - 740 - 27 - 430 - 12 - 81 - 0 - 03 - 2 - 07 - 3 - 0
優勝回数4回5回2回0回0回0回
1-2. 特別昇班・特別昇級した選手、およびS級優勝した選手

119期でデビュー期内にA2班へ特別昇班した19人、さらにS級へ特別昇級した4人、およびS級優勝を達成した2人は次のとおりです。

表1-2. デビュー期内の特別昇班・特別昇級
 人数選手名
A2班への
特別昇班
9連勝で昇班16新村穣(神奈川)、犬伏湧也(徳島)、上野雅彦(香川)、吉田有希(茨城)、木村佑来(宮城)
上杉嘉槻(福井)、山根将太(岡山)、志田龍星(岐阜)、橋本凌汰(岡山)、林昌幸(愛媛)
菊池翔(福島)、木村皆斗(茨城)、田口勇介(秋田)、桑名僚也(埼玉)、橋本壮史(茨城)
鈴木浩太(千葉)
レインボーFで昇班3北井佑季(神奈川)、梅田加津也(神奈川)、渡口勝成(山口)
S級への特別昇級4吉田有希(茨城)、上野雅彦(香川)、山根将太(岡山)、犬伏湧也(徳島)
S級戦優勝2吉田有希(茨城) 3回 、 犬伏湧也(徳島) 1回 

デビュー期内にS級まで昇級したのは上記4選手ですが、デビュー2期目となる今年の3月末までに、鈴木浩太選手(千葉)と志田龍星選手(岐阜)がS級昇級しています。
総合的に見て119期のデビュー期成績は、過去最高だった117期と遜色ないほど優秀なものでした。

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2. 119期デビュー初期成績の予測値vs実績値

昨年4月の分析記事「119期デビュー後初期の成績予測」で、デビュー7場所後のG指数および競走得点を予測しましたが、予測値に対する実際の実績値の散布図を下に示します。
なお119期ではルーキーシリーズが1戦増え(全4戦)、ルーキーシリーズを3戦する選手が出てきました。よってG指数・競走得点の実績値は、「ルーキーシリーズを2戦分に換算本デビュー後5戦」とし、昇班対象となる本デビュー後の開催数が全選手同一となるよう補正しました。

実績値が予測値どおりであれば、水色の実線および緑の実線上にのるのですが、実際は散布図の丸点のような分布でした。
今回は結構なバラツキが生じ、予測値と実績値の相関係数もG指数で0.71、競走得点で0.68となり、過去最低のものでした。
また、予測値と実績値の回帰直線は各図の点線のようになり、実線とのズレも例年より大きくなってしまいました。

デビュー7場所後のG指数 予測値vs実績値 デビュー7場所後の平均競争得点 予測値vs実績値

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3. 121期デビュー後の初期成績予測

上で示したように、昨年新人119期では予測値と実績値の間に結構な差が生じてしまいました。
本来なら予測式を全面的に見直したいところですが、一昨年まではある程度上手く予測できていたので、今回までは同じパラメータ(養成所成績の総合点を対数変換したもの[1] ) を使用した一次式( \(y=ax+b\) )で、傾き \(a\)切片 \(b\) の修正だけを行ないます。
来年の確認でもあまり上手く予測できていなかった場合は、予測方法の全面的な見直しを行ないたいと思います。

3-1. 養成所成績の評価

まずは次式で各選手の競輪選手養成所での成績を評価する総合点(\(ZScore\))を計算します。
(2018年6月の分析「111期生在校成績とデビュー期成績の関係調査」で求めた計算式です。)

総合点の計算式 \[ ZScore = (1.1×ZrtP)+(2.5×ZrtB)-(85×Z2tm)+(50×(Av2T-11.49))+1270 \]
\(ZrtP\)
競走訓練における連対率
\(ZrtB\)
競走訓練におけるバック取得率
\(Z2tm\)
在所中の 200mFD最高タイム
\(Av2T\)
同期全体の 200mFD最高タイム平均値

計算した総合点は表3-1 に付加しました。また下の予測式でも使用します。

3-2. デビュー後の初期成績予測

上の総合点を基にデビュー後初期のG指数と競走得点を予測します。
ここで言う「デビュー後の初期成績」とは次のものです。

デビュー後の初期成績
7月本デビューして5戦後のG指数値または競走得点(ルーキーシリーズの成績も含む)

基本的には 2018年6月の分析「111期生在校成績とデビュー期成績の関係調査」の(1-2)式(1-3)式を利用しますが、今回は予測式が上の散布図(図2-1 ,図2-2 )の実線(119期用の予測式)と破線(予測値と実績値の回帰直線)の中間となるよう係数を修正します。
作成した初期G指数の予測式および初期競走得点の予測式は次のとおりです。

初期G指数の予測式 \[ Giscore = 10.52×Ln(ZScore-200.0)-21.72 \]
\(Giscore\)
デビュー後の初期G指数
\(ZScore\)
養成所成績の総合点
初期競走得点の予測式 \[ Riscore = 8.339×Ln(ZScore-200.0)+34.45 \]
\(Riscore\)
デビュー後の初期競走得点
\(ZScore\)
養成所成績の総合点

今年デビューする121期選手の養成所成績、および上式で計算した「総合点」,「初期G指数の予測値」,「初期競走得点の予測値」を、総合点が高い順に並べて表にしました。レース予想の参考データとしてご利用ください。
参考として、既に早期デビューした太田海也選手(岡山)・中野慎詩選手(岩手)の成績も記載しています(G指数と競走得点の予測値は省略)。

早期デビュー者を除けば、総合点1位・2位・3位は 大川剛選手(青森)、真鍋智寛選手(愛媛)、東矢圭吾選手(熊本)でした。卒記チャンプの纐纈洸翔選手(愛知)は35位でした。
121期はゴールデンキャッパーが15人もいます。過去最高だった119期の7人という記録を大きく塗り替えました。早期デビューした太田海也選手・中野慎詩選手も既に大活躍しています。
121期も117期・119期と同等な成績、またはそれ以上のデビュー期成績が望めそうです。今年も7月の本格デビューがとても楽しみです。

表3-1. 121期 養成所成績とデビュー後の初期成績予測値背景がオレンジ色の選手はゴールデンキャップ獲得者)
総合点
順位
選手名年齢府県養成所成績本デビュー5戦後
出走
回数
1着
2着
3着

回数
決まり手競走得点200m
タイム
総合点G指数
予測値
競走得点
予測値
得点順位
1太田 海也22岡山24144118963080.45210.51秒624.4------
2中野 慎詞22岩手301763177114180.56110.69秒565.1------
3大川 剛23青森3718103219124380.13410.81秒554.040.0283.39
4真鍋 智寛23愛媛482463163179178.82510.77秒484.337.7281.57
5東矢 圭吾23熊本4018541411110178.72610.79秒481.337.6181.48
6荒川 仁23千葉37153812188178.62810.73秒470.337.1981.14
7一丸 尚伍30大分4720481201011378.48910.74秒454.836.5780.65
8岸田 剛23福井47851114156176.572010.77秒437.235.8180.05
9末廣 快理23兵庫4259911073476.821710.74秒437.035.8080.05
10後藤 大輝21福岡4646116161273.764110.86秒435.535.7479.99
11山口 多聞20埼玉3866210262275.762310.75秒434.535.6979.96
12坂田 康季23佐賀4713104143124476.801811.11秒431.735.5679.86
13安倍 大成23東京4431369527275.522510.74秒426.035.3079.65
14塩崎 隼秀21愛媛46294541920380.45310.97秒415.934.8279.27
15梅崎 隆介32長崎45313710073675.912210.92秒414.234.7479.20
16堀 航輝26青森4864514224274.043710.94秒413.634.7179.18
17室井 蓮太朗21徳島3411765178277.721111.02秒406.034.3378.88
18富 武大24山口451291180610578.461011.07秒402.534.1578.74
19小西 晴己20三重456849028475.282711.00秒396.933.8678.50
20昼田 達哉23岡山477999047576.741911.04秒394.633.7378.41
21近谷 涼30富山46612129175577.411411.14秒392.833.6378.33
22伊藤 温希22岐阜3689107068378.69711.25秒392.033.5978.29
23真鍋 顕汰27三重467646038274.343610.86秒388.333.3878.13
24村田 祐樹23富山450338010272.225510.72秒388.333.3878.13
25安彦 統賀23埼玉48165880910277.601211.18秒387.233.3278.08
26加藤 将武20埼玉471312420314877.551311.01秒381.032.9777.80
27松本 秀之慎19熊本48312147155477.001611.07秒377.632.7777.64
28治田 知也23新潟447654045475.043210.91秒375.632.6577.55
29日高 裕太20静岡376522152374.433510.83秒373.432.5277.44
30中川 聖大23福岡444645032573.764011.06秒361.031.7476.83
31常次 勇人20大阪441234020170.506610.79秒360.831.7276.81
32甲斐 俊祐23大分484783017375.332610.92秒360.331.6976.79
33近藤 雄太23岡山4803104000374.023810.82秒355.731.3976.55
34中野 光太郎22徳島457974039477.221511.23秒354.531.3076.48
35纐纈 洸翔19愛知436752028375.163011.04秒354.231.2876.46
36滝本 幸正23新潟461752031473.694310.87秒353.831.2576.44
37原田 翔真21和歌山473336003373.823911.10秒350.231.0076.24
38齋藤 雄行26神奈川470474010371.705810.96秒346.830.7676.05
39比佐 宝太21福島481636030472.795311.18秒344.730.6175.93
40中山 遼太郎19熊本400873002675.202911.11秒344.130.5775.90
41照井 力斗20岩手4821074016575.003311.24秒340.630.3175.70
42松下 綾馬25岡山453303204071.206311.11秒334.729.8675.34
43五十嵐 綾21福島467152034174.553411.14秒330.829.5575.09
44高橋 優斗25大分483671005475.722411.11秒329.229.4274.99
45橋本 陸24福岡472593040373.234711.19秒328.929.4074.97
46長谷川 裕一36愛知440130000171.765610.84秒328.829.3974.96
47矢部 駿人23岡山481142001170.296710.99秒328.629.3774.95
48森本 桂太郎23愛媛422440004273.704211.07秒322.528.8674.54
49合地 登汰23岡山452310003271.735711.06秒319.828.6374.36
50中釜 健次23大阪477571017475.063111.31秒319.828.6274.36
51南儀 拓海23富山460120000170.266810.98秒316.828.3674.15
52長松 大祐24大分471890003676.312111.21秒315.928.2874.09
53河崎 正晴21熊本450273000272.575411.23秒314.728.1774.00
54近藤 圭佑36埼玉390110000171.286111.01秒314.728.1774.00
55長谷川 飛向25東京441221011171.475911.16秒312.327.9573.82
56小榑 佑弥22新潟440531001473.364511.25秒309.627.7073.62
57永井 哉多20東京482360003273.044911.18秒308.927.6273.56
58添田 龍児21神奈川470261000273.314611.18秒307.427.4873.45
59高本 和也25神奈川410371011172.955111.23秒307.327.4773.44
60小坂 丈26茨城460140000170.886411.10秒306.627.4073.39
61小川 将二郎19徳島470341000371.276211.29秒300.426.7772.89
62野崎 翼24岐阜450780001675.262811.37秒298.426.5572.72
63中山 拓人22埼玉450311001270.826511.34秒296.726.3772.57
64田代 匠21福岡480120001070.126911.25秒293.826.0572.31
65池田 伍功羽19熊本470220001173.144811.28秒293.626.0372.30
66米村 光星22熊本480450001373.044911.35秒292.125.8672.17
67田中 要22宮崎470150000171.466011.28秒291.325.7672.09
68眞砂 英作26香川380171000173.624411.39秒289.025.5071.88
69藤岡 徹也33兵庫460230001172.865211.43秒280.924.5071.09
70高本 旭32大阪380100000169.107011.51秒272.323.3170.14

脚注

  1. 1. ^  予測式のパラメータが総合点の自然対数変換値となっている点について
    基本的には「111期生在校成績とデビュー期成績の関係調査」で示すように、養成所成績そのものをパラメータとした 直線より、成績上位側で頭打ちとなる対数曲線をあてはめたほうが相関係数が高くなるからだが、”成績上位側で頭打ち” となる理由は、デビューは最下位クラスのチャレンジ戦であり、チャレンジ戦に おいては、通常の5レース制であれば 予選1着・準決勝1着・決勝1着で優勝しても239点(1レース平均79.66点)しか得られず、どんなに脚力が抜けていてもそれ以上の点数が得られないためである。
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