再放送の『坂の上の雲』を毎週見ていた。毎回巻末にメイン・テーマの「スタンド・アローン」が流れるのだが、その旋律を聴くと毎度ぞくっと背筋が寒くなった。中学校の時分にラジオから流れるザ・ビートルズの「レット・イット・ビー」がもたらす感動とまったく同じだった。むろん音楽に限らないけど、背中ぞくりは佳曲佳作のバロメーターである。
一週間前、ひょんなことからHさんの邦画ベストが『KAMI KAZE TAXI』だということを知った。Hさんの口から出た「カンタケ(寒竹・役所広司扮する主人公の役名)――」という響きに、私は思わず意味不明な感嘆の声をあげた。私のまわりにカミカゼタクシーを絶賛する人間がもう一人いる、私は言った。私の数すくない知己の内にこれで三人ですよ。
そのもうひとり、Sは成田和也のファンでずっと追っかけている。成田のことなら、成田のレースならやつに聞くのが一番だ。そうだ、柏野智典が今おどろくほど強いと言ってきたのもSである。
六十代後半ふたり、七十代ひとり、計三人の男が三十年前に制作された原田眞人の作品を愛でている。
話はもどる。「坂の上の雲」の劇中において伊藤博文を演ずる役者の見映えがいい。顔に見おぼえはあるが名前がとんとうかばない。エンド・ロールで確認すると加藤剛、あぁ、と納得した。
話はさらに散る。何年のことだかまるきりわからないが、普段は洋画ばかりの「日曜映画劇場」で邦画の『砂の器』を流したことがあった。司会の淀川長治氏が、演技はまだまだもすごい二枚目(正確な文言は憶えていない)と加藤剛を表したのをうっすらと記憶している。
Sとはむかしの競輪や野球の話をすることが多い。もちろん最近の話をまるでしないわけではない。「ま、強いけど鼻につく。どうせ一時だろう。それに比べりゃ……。」
古いやつだとお思いでしょうが――。
附記。「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」と吉田拓郎が唄っている。
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