むかしの競輪は、あの頃の競輪場は、むかしの邦画は、あの頃の映画館は、そんな話ばかりじゃ埒があかない。
競輪はやっぱり九車でしょう、七車じゃどうもコクがない、と吠えたって、当たった時の悦びとはずれた時の脱力に差などない。
七車には七車の買い方がある。少々は安くとも絞って買えばなんとかなる、と自分に言い聞かせながら打って、微妙にずれて、もしくは呆気なくはずれて、腹立ち紛れに七車憎しとなり、九車専門に転向しようなどと温い決心をするが、ノー・ホーラの日がつづき嫌気がさす、めげる。だったら競艇、長年月不変の六艇、サイコロの目だって六つなのだからと訳の分からないことを口走りながら乗り出すものの、俄ごしらえが容易に競艇党にまざれるほど甘くはない。
〽「あの頃」「あの頃」って言うなよ、明日にホラの一つもふいてくれ、たぶんこのいまいましい今が、すぐに美しく、懐かしいあの頃、とSIONが「MAYBE」で唄っている。
昔の競輪も今の競輪もたいして変わっちゃいない。昔の競輪場と今の競輪場の外見はけっこう様変わりしているが、中味などさして変わってはいない。変わったのは私自身なのだと気づいてはいるものの、あっち側のせいにする。
どうせなら特別から何から七車にしてしまえばいい、と暴言を吐いてみる。私は貧乏性だから七車と九車の二種類が、いくつもある賭け式が、七面倒くさいのだろう
♪時間がない、おちつくのを、待ってられない、急いでくれ、雨の日、最低の気分で、低い方に流れる、ゴミの中で、もう行くぜ、いつまでもそこで、がっかりしてるなら、幸あれだ、もう行くぜ、たかがしれてる、だけどこりない、俺にも幸あれだ、は「早く来い」、SIONが歌うバラードである。
戸田も大宮も初日だ。さあ、どあしよう。
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