最寄りの駅がどこだったかも忘れているからホテルの名前もおぼえていない。ロビーの一角にある喫茶室でMさんと珈琲を飲んでいた。席に着いて十分たったかたたないあたりで、競輪選手とおぼしき男性二人がタクシーから降車するのを窓外に見た。先輩格風の方は浅井康太とすぐにわかったけど、もうひとりの顔がMさんもわたしもわからず、となりのテーブルにいた同業他社の記者に竹内雄作だと教えてもらった。竹内も知らないの? という口調だったと思う。季節は冬の二月で時刻は正午近くだったのかなあ。はっきりしないが夜間ではなく昼間だ。昨一年の活躍を評価された選手たちの表彰式が催される場所にMさんといたこと、竹内雄作の顔を知らずにちょっと情けなかったことを、何かにつけふと思い出す。
山口拳矢が竹内雄作を引っぱる。想像だにしなかった。二人が《同門》ということにも気が付かなかった。ま、顔も知らなかったのだから仕方ないわな。と開きなおるのもかっこわるい。
松浦悠士と平原康多の着差は「タイヤ」――両格上の両格上による両格上のための富山記念が終幕した。三着は和田圭で四着に荒井崇博――「宿口陽一が失敗しても平原康多という画なら、宿口はもちろん和田圭もはぐれそう。毎日番手捲りで決勝単騎の荒井崇博はどうしても評価が下がる。トリッキーな山口拳矢に先行屋の竹内雄作がマークしきれるのかしら。」――昨日の拙稿を読み返すに穴があったら入りたい。
松浦悠士は「全部わかっている」かのごとき今日の競輪だった。先日のオールスター競輪の決勝であそこまで脇本雄太を苦しめた男だもの、このくらい《お茶の子》さいさいであるか。
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