平塚記念の第二日、第七レースは、日本語の形容として正しいのかどうか分からないけれども、我流(元ネタらしきものがあるにはあるのだが)に表せば、まさに湯気の立つような競輪だった。
永澤剛が強烈な体当たりで仕掛け端の阿部英斗を失速させた最終二角すぎが「発火点」となり、一気にし烈な肉体闘走に昇華した。浮かされてしまった阿部は反射神経のように内に降りる。永澤の後ろ須永優太をキメるとすぐさま、これまた野生の勘が働くのか、空き気味の内を一車、また一車と上がる阿部、その最中にもずれたヘルメットの位置を器用に正す阿部の所作が実になんともチャーミングであった。四角には番手選手の内ふところまできた。阿修羅の突進で放り上げた阿部だったが。
五人落車(阿部本人は落車かつ失格)の競輪を「湯気の立つ」などとはやし立てるのはいささか気も引けるけど、偶発の「ラフ・プレー」は、若い時分から、私の好物なのだ。下種な根性とご寛恕を願いたい。
半世紀以上前の後楽園球場――もちろんドームではなく、今から思うと割とちんまりとした球場という記憶が残る――によく親父と巨人戦を観に行った。前もって入場券を買うなどしなくとも、よほどのことがなければ、行き当たりばったり外野席には座れた。たまには乱闘騒ぎもおきる(今より断然あの頃の方が多かった)。そんな試合に出くわすと、帰路の電車の父子の会話はいつもより弾んだ。親父に今日の阿部英斗をビデオでもいいから見せてやりたいがそれは叶わない。
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