犬伏湧也のカマシが独りできて、町田太我が懸命にスイッチする、松浦悠士は前の町田が犬伏に追い付くのを見届けながら、自分の後ろにおさまった平原康多を視認する。町田をぎりぎりまで残したい。あえて車間を詰めない。平原を目で殺すように。憎いほど冷静だ。ああ、これだ、これだ。松浦にしかできない競輪を今私は見ている。
さすがの松浦も新田祐大までは見えなかった? もうこないと見切っていた? ガッツポーズの新田には目もくれず、松浦の視線が右横にいた平原にむけられる。一瞬「???」という表情を垣間見た気がするのだが、私の脳内のいたずらかもしれない。
二着なら三百万、三着でも二百万の賞金だ。もちろん三着以内なら競輪祭出場も確定する。松浦が道中で描いて策した広島ワンツーもしくはワンスリーを刹那に消し去ったのは新田だった。最近の新田は、最新型の新田を誇示するかのように文字どおり自由自在の競輪が目立っていた。しかし今日は一転小動きなし、各線が前へ前と攻めあうなか、泰然不動の強襲劇だった。
やはりこの面子で、九人の競輪をやれば、いいドラマの出現率は高い。昨日も述べたが、荒井崇博と松川高大がそれぞれ、新田の後ろ、平原の後ろを回り、きれいな四分戦にしたのも隠れたるファインプレーだったと個人的には思う。
車券ははずれちゃったけど、松浦にしかできない競輪を見させてもらったのだから、我に好日なり。
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