四十年近く前の川崎競輪場、最終日、最終レースの敗者戦。◎ラインの番手で鈴木等(山梨・34期)がインで粘り、一センターの金網で観戦していた俺の「ドカしちゃえ!」とシンクロしたように競り勝った場面を忘れないでいる。セックスを超える快感が降りたと記せば大仰にすぎるか。配当は二番人気か三番人気の六百幾らだった。
急な停電で待たされたあげくに中止になった時も川崎競輪場にいた。
坂本勉と佐藤義則(だったか?)の長~い写真判定は逃げ切り一本で買っており、ふるえ気味だった。
行くとかならず三コーナー付近にあった店の味噌汁付きカレーをかきこんだ。二十代後半、あの頃の食欲が懐かしい。
帰りの客がぐちゃぐちゃに入り混じる旧い歩道橋ではじめて集団スリの連携を目撃した。その日から俺は川崎競輪場から川崎駅の徒歩経路を変えた。
俺のからだの一部は川崎競輪場の想い出で出来ている。
客が入りすぎて特別競輪をずうっとやっていなかった川崎が、混雑緩和のために第九レース決勝・最終に敗者戦のプログラムで開催していた川崎が、無観客というのも皮肉めいた「伝道」なのかしら。
川崎競輪場は俺にとって特別なのだ。
一日ぐらい現場に出掛けるつもりでいたが、この時世では仕方ない。川崎の次の特別競輪まで生き延びることにしよう。
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