踏み出し一発で内をキメて直線はズブリ差す――。西武園FⅠ(いったい何年何十年前だろう)の完全優勝に見惚れた俺は以後、迷わず渡邊晴智(静岡73期)を追っかけた。彼が初めて特別競輪を走った初日の予選(だったとおもう)も当然ハコ差し一本で買った。競りの番組だったかどうかの記憶ははっきりしないが、結果は渡邊の頭で二着三着が(逃げ残りかズブズブの)写真判定で、随分待たされた末に同着となった。配当金は減り正直がっかりなのだが、同着は拾いものの幸運でもある(微差で車券は紙屑寸前なのだから)と気を取り直したが、チョイ浮きの金はすぐに溶けた。
公営ギャンブルで同着の発生率が高いのは何といっても競輪だろう。もしかしてあらゆるスポーツ競技に於いての比較でも競輪の同着が一番多いのではなかろうか――。そんなことを茫と考える。
同着で微妙に安堵したこと。失格で損したこと。失格による繰り上がりで得したこと。三つの総数とて大した数ではなかろうが、今となってはその内の二つ三つしか記憶に残っていない。
と、ここまで記してあの晴智の同着の記憶も不安になってきた。もしかしてハコ差し勝負目にズブズブ押さえだったのかなァ――。
大垣記念の第六競走、前掲の渡邉晴智が五番車で出走するが、現在締切五分前、目標の山本紳貴を差すだけでオッズは二車単40倍もつけている。
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