いいですね「こじまっち」来ちゃうンじゃないですか? 同行のO君が言った。ああ、目標もいるし。いいンじゃない。なんたって小島敬二だからな。大宮記念の二日めに交わされた会話だ。オール平仮名の「こじまっち」の横断幕があか抜けているとは思えぬものの妙に気になった。その日はもちろん、引きずって翌日も今日も小嶋から買った。目標がいてもいなくても小嶋はこなかった。なにもアツくなり追っかけたわけじゃない。損害も軽少だった。毎日こじまっちを気にしていたら不意に、佐藤正午の『しみじみ賭ける』という小品を想い出した。小嶋の発した「しみじみ」ということばを軸に、2002年の平塚ダービーを読み解いた快作で、いくど読み返してもじんとくる。また読んだ。読むとよみがえる。当該の平塚ダービーの決勝はラジオ中継で聞いていた。渋滞中の車の中だった。助手席にいた俺は時間前に抜かりなく選局した。そして運転席にはあの人がいたのだった。
大宮記念最終日の小嶋は終審から先行した。悲しいかな裸逃げだった。次から次に抜き去られていった。第三レースだった。発走は正午ちょっと前の11時57分であった。
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