数字的な根拠などないのに「地元三割増し」なる形容が予想紙におどっている。筆者も又たいした考えもなく、まるで「点景」のように地元三割増しという文句を配して、拙稿を更に汚している。だけど誰が言い出しっぺか知らぬが、地元三割増し、好もしい言葉である。
末木浩二の優勝は地元三割増しどころじゃない。一体、地元何割増しになるのだろうとも思ったけど、いやいやそれは失礼だ、直前の岸和田GⅠ高松宮記念杯の決勝に乗った選手、しかも準決を一着通過だった選手が、地元の記念を優勝したとて不思議なく、やっぱり地元三割増しが正しい。
脇本雄太は何か試したい事があったのかしら。たとえ九番手からでもいいところ迄来ると書いた新山響平はほんとに九番手になった。坂井洋は恵まれて決勝に乗った感が強いので関東三人全部切る、の暴論が恥ずかしい。
昨日、第三日の最終レース、一着インタビューに現れた脇本雄太に対し「脇本ありがとう!」なる声援が飛んでいた。聞きながら、声の主は脇本から買い相当儲かった、脇本の凄い捲りに只只ありがとう、脇本の競輪そのものにありがとう、考えなくてもいい事をいろいろ考えた。
何十年も競輪をやって来て、私は選手に「ありがとう」と声を飛ばした事はないのだけれども、もし、今日、弥彦競輪場に居て、半日か一日やられにやられおかしくなり、どうにでもなれ、地元三割増しで末木から、全全は流儀に反する、だから末木の頭でS班の二着三着! 関東三人全部切り野郎にそんな声が降りてくるわきゃないのだが、何かの弾みに起こった脳の暴走で車券を取り込んじゃったとしたら、マイクが拾ってくれるような大声で「末木―ありがとう!」私は叫んだ事だろう。
人生始めての「ありがとう!」、生きている内に何処かの競輪場でやってみたいものである。
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