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梅雨明けの競輪場

2019/07/29 21:59 閲覧数(583)
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 八王子での小用は小一時間で済み、中央線で三駅上り立川駅、北口から気まぐれにいつものシネマ通りはやめバス通りを歩いたが、うだるような暑さに負けて見覚えのある喫茶店で涼む。年季の入ったビルの二階にある『珈琲ルーブル』には昔たまに入ったことがある。三十数年前、このビルの最上階で人生最初のパスポートを申請した(初めての海外はグアム島で、旅費は友人が立川競輪で儲けた金を充てた)。ブレンド珈琲と一緒に出されるサーヴィスのビスケットが意外と美味い。店に流れるクラシック音楽が映画『ゴッドファーザー3』のラストに流れるマスカーニの佳曲にかわった。窓外眼下に《立川競輪場⇒820m》の案内板が見える。猛暑に耐えながら次々と人が過ぎてゆくが、苦悶の表情に近い老人と嬉しそうにしか見えない女子高生が両極で、そのあいだに事務服の中年女性、ミュージシャン風、若いサラリーマン等々それぞれの「暑い~!」があるみたいだ。俺の席の右前の四人席の男女の会話が断片的に届いた。正丸峠、秩父、埼玉……。店内で目にするもの耳にするものの大半が追懐につながりそうになるのは、何かのサインなのだろうか。俺は身構え二回三回深めに呼吸したが、エイヤ吉兆だろうと開き直り、やらいでか! と席を立った。
 レジで支払いをし、エスカレーターを降りおもてへ出、約一㎞(表示は820mだ)を、苦しい顔にならないよう意識しながら歩いた。過去に、梅雨明け宣言の当日競輪場に行ったことがあったかを考えようとしたが、すぐに諦めた。

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