平塚競輪場は仕事より遊びで訪れることの方が多い。東海道線のグリーン席はちょっとした旅気分だし、少し足を延ばせば国府津、根府川の駅から海辺まで歩ける。
平塚の繁華街でKさんに偶合したのは二十年以上前だ。野村哲朗を追っ掛けてるんだとKさんはよく通る声で俺に言った。野村は典型的な一発屋だったが、この何場所かは準決も勝負になっていた。軽く飲むかと誘われたが、俺は友人と一緒だからと断った。Kさんの傍に居たのは奥方だったと思う。その女性が後年、大変な事件を起こすことになるのだが、ここでは詳述しない。
KさんはI先輩やE先輩と親しくしていて、たまに記者席に現れたり、仕事帰りに酒場で合流したりした。派手な買い方をしていたKさんを競輪場で見かけなくなった。そんな話に皆が頷くようになった頃だ。二人の刑事が会社までI先輩を訪ねて来て、俺たちは事件の概要に驚かされる。
その半年くらい前だろうか。俺は京王閣のバックスタンドで偶然、Kさんを目撃しているのだが、洒落者だったKさんの風采は驚くほど崩れていた。見てはいけないものを見てしまったなどと書けば傲慢に過ぎるが、俺は急いでその場を立ち去った。
Kさん、I先輩、E先輩のなかに俺が初めて混ぜて貰った日だから二十五年前だ。立川から高円寺だったか阿佐ヶ谷のKさんが営むスナックへ流れた。店内の有線放送からはビリー・ジョエルが聴こえた。俺はこの仕事に就いて間もなかったが内心、しょっちゅう見切りを考えていた。そんな折の気鬱な酒だったので壁のスピーカーから流れた「ピアノ・マン」の旋律が妙に沁みたのを憶えている。
今でもピアノにハーモニカが被ってゆく美しいイントロを聴くとあの晩の、苦い酔いが蘇るが結局、俺は仕事を辞めることもなく、毎度の能書など記している。困ったものだ。
平塚記念三日目〈第十競走〉岡山の星島兄弟の車券をよく買った。一成はヨコ、太はタテの選手なのだと偉そうに論じたこともある。桐山敬太郎-林雄一の番手捲りに逆らえないのなら三着に星島太だ。
①⑤②の三連単。
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