松戸駅で各駅に乗り換えた。進行方向右側のドア際に七八十年配の爺さんと三十半ばの女性が同時に位置を求め、一瞬被ったが、女性が丁寧に譲り、爺さんは恐縮しながら幾度も頭を下げた。そして北松戸までの一区間、これが楽しみなもんでとスポーツ紙の競輪面を女性に見せ、とにかく雨がやんでよかった・ひと安心……等々ほぼ一方的に話しかけ、女性は意味がわかっていないとおもうが、優しい気立てなのだろう、いちいちに小声で相づちを打つのだった。令和十年、俺も爺さんのような人生を迎えられるだろうか。
すでに閉められている松戸競輪場のバックスタンドは選手の横断幕で占められ、その分もホーム側は大勢の人人人で盛り上がっていた。昔、テレビ撮りのため観客たちが一か所に移動させられる場面に出くわしたことがあったっけ。場所は後楽園ホール、国際プロレスの興行だった。
松戸ダービーの二日目を第二センターの一般席で見物している。
第八競走――。八番車の取鳥雄吾から流したら九番車の志智俊夫の頭で、枠だったかとぼやいた時点で今日はダメかも知れない。
第十競走――。三番車の中川誠一郎の頭からも一番車の新田祐大の頭からも買っているが、①③と③①の「両立車券」だけ除外じゃァ――センスの欠片もなしだ。
第十一競走――。渡邊雄太-中村浩士でぶっ叩いたとき左下の席の男がヒロシ~と叫んだ。中村の頭車券を持っていた俺も心中で捲らせるなと気を送ったが……。最終バックから◎平原康多-〇諸橋愛がきれいに捲り、脱力している俺の左方で声が発せられた。ヒラハラ~! ヒロシ~の男だった。ふうむ……。
某さんと競輪に行くと、観戦場所はかならずバックスタンドで、バック線より二三メートル二角側に寄った位置が好みだった。バックから見られない競輪場など競輪場じゃない――某さんだったら不機嫌になることだろう。
三十五年前と変わらない段差の広いコンクリートの階段に脚がパンパンで腰も痛い。
俺のギャンブルの柄はもう、現場むきじゃないのだろうか。
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