夜半から降り始めた雨が、朝方は音を立てる様に強くなった。
小田原の天気はどうかしら。まだ起きていない頭で思ったが、今さら車券の買い目を変えるわけでもない。オートレースに雨予想は付きものだが、競輪の雨予想なぞあまり聞いたことがない。昔は本場でしか車券が買えなかったから、否が応でも気候が、暑さ、寒さ、風雨が身に馴染むので、自然に雨予想に風予想になっていたかもしれない。テレビ観戦は便利だけど、どうしても現地の天候を体感することはむずかしい。その点は鈍感にならざるを得ないようだ。
何十年も前の話だけど、遠征の選手が「問題は明日の天気。おれ雨ぜんぜん駄目だから」とぽつり。翌日は朝から雨で、苦手な選手はあっさり負けた。雨巧者、雨下手は実際に存在すると思うが、気にし始めたらきりがない。
小田原GⅢは宿口陽一の優勝で閉幕した。
雨あがり乾いた走路を中団から渾身の捲りだった。
予想していたことではあるが、これほどの一本棒とは思わなんだ。
北井佑季も、あまりに誰のアタックもないから、拍子抜けじゃないけど、けっこう孤独な先行だったろう。有り体に言えば、北井だけが風を受け、残り八人はびた一文無駄足を使わない。あと一周くらいからやっと八人が動きだす様が、私には競艇のスタートのように見えた。と申せば何のことやら。
終審で大時計が回転し始める。イン逃げ、カド捲り、大外ダッシュの要領にでも例えよう。ともかく最後の直線はいっぱいに広がってゴールになだれ込む。音がするようの集団強襲であった。ひとりずっと先頭の北井など、その唸りに恐怖すら感じたのじゃなかろうか。そうな馬鹿な事ないか。
一着の宿口から一車身以内に二着から六着の集団、そのすぐ後ろに七着八着の二人だ。ふうむ。単純な一本棒は激戦のゴールを生む?
ま、競艇のスタートは冗談にしても、なかなかお目にかかれない競輪を見させてもらった。
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