先日、某局の音楽番組で、フォークシンガーの南こうせつが、歌の一番いいところは、歌がすぐにその歌が歌われた時代に連れて行ってくれるという事だ、と喋っていた。おもいきり得心する。たとえば吉田拓郎の『どうしてこんなに悲しんだろう』を聞くと、一緒にギターを始めた、フォークソングを好きになった仲間の顔や、練習場所となった溜まり場の記憶が色濃くなり、なんだか胸の辺りが痛くなる。雑誌の付録の歌本に「どうしてこんなに悲しんだろう」のコード譜を見つけた時はうれしかった。しかし「D→F♯m」の歌い出しですぐに挫折した。初心者の私にはまだセーハを必要とするF♯mを押さえる事は出来なかった。後日、友人の兄貴が「D→F♯m」は二カポ(二フレットにカポタストを付ける移調操作)で「C→Em」にすれば大丈夫と教えてもらい、小躍りする程よろこんだ日の事迄もがありありと甦るのだ。
今日、サマーナイトフェスが開幕した。最終レースは、寺崎浩平の先行を古性優作がチョンと差し、三谷竜生迄きれいにつづく近畿ワンツースリーだった。中継の音声がゴール直後から三番手の三谷を熱烈に讃辞する声を拾っていた。「三谷、お前が一番よう頑張った」、男のよく通る声がテレビのスピーカーを通して二度三度、私の耳に聞こえて来た。声は私を昔の川崎競輪場に時間旅行させた。まだこの仕事に就く前だから二十代後半、一万二万は軽く入っていた時代の川崎だ。平気で発走時間がひとレースくらい遅れちゃう川崎で同じ声を聞いたのだった。関東弁だからお前が一番よく頑張った、だったと思うけど、先行し二着に粘った選手、好マーク二着の選手どちらかに向けた熱い労いの声が、私が観戦していた一センターの金網から右手の方、やっぱり今晩の玉野と同じ様に二度三度聞こえたのだった。何十年も想い出した事もなかった川崎の一景が頭に降りて来て、やはり胸の辺りが痛くなるのだった。
今日、スピードチャンネルで、玉野の競輪の中継を見られてよかった。
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