豊橋記念は地元の吉田敏洋の優勝で幕を閉じた。
吉田が突き抜けたのを視認した瞬間、――ここで浅井康太の番手から吉田敏洋かぁ……と、俺は声に出さずに呟いた。
さかのぼれば平原康多と武田豊樹の関東コンビ、今なら松浦悠士と清水裕友の中国コンビが連携の前後を替えてくることで有名だが、浅井康太と吉田敏洋の連携もその時々で前後を違えて闘う。
ただ、平原=武田、松浦=清水の連携とも、ほぼ番手有利に導く競輪であるのに対し、中部の二人の場合――浅井と吉田の「格の違い」に依るのだろう――異なる傾向を示していた。正確な数字は持ちあわせないが、大雑把な両者の「損得」を勘定するなら、浅井に分ありという印象を持つ。
五年前の七月。川崎で開催されたサマーナイトフェスティバルは吉田がガツンと逃げ浅井の優勝だった。以降の両者の連携を俺はしつこく追っかけた想い出がある。もちろん俺の単純な思考回路は“お返し”――浅井が行っちゃって吉田に絶好の画――だった。時折「単打」ぐらいはあっただろうか。が、会心の「本塁打」には出くわせず、収益はかなりのマイナスであったと記憶する。半年、一年……いつしかあまり気にしないようになった。というか、二人が「目だつところ」で連携する機会も徐々に減っていった。
準決は浅井の捲りを吉田がズブリ差し、二車単の配当は810円。――この程度なんだよなぁ、出たとしても……。チラリおもった。
決勝の車券を買う段にはまったくのスルーだったにもかかわらず、忘れた頃に・あのサマーナイトのお返し・浅井康太を“使える”吉田敏洋じゃないの!――と、悔しがる馬鹿者一人。
競輪を悟るにはどうすればいいのでしょう――? そんな愚問を放ったとする。釈尊はそれにも無記とお答え下さるだろうか。
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