地下鉄で一駅の距離にある警察署での運転免許証更新は意外に混んでいた。
次の講習は五十分後だと告げられ、表に出、大通りの向かい側にあるハンバーガー屋で珈琲を飲み時間を潰した。出直して講習所の開室を待っていると、初老の男性が入って来、係の人に時間が間に合えばすぐの講習を受けられると云われ、ヨシっという感じで急ぎ手続きを始めた。
講習の最初は「危険の予測」をテーマにした運転者心得の映像だった。前走車が丁字路のやや手前で駐車する。すかさず追い越そうとする後続の車、そして死角となった左の道から違う車が右折してくるのだが、その数秒前、衝突を予測したとばかりに「こりゃ危ない――」という呟きが聞こえた。俺の隣の隣に座る「ギリギリ・セーフ」の男だった。
テレビ観戦なりライヴ観戦で、選手が狭いところを割ろうとしたり、無理無理に掬ったりするときに競輪ファンの口から思わず出る「そりゃ危ないよ――」「空いてるのかァ――」「そこは無理だろうよ――」の科白のトーンに酷似した「こりゃ危ない――」だ。俺は笑いそうになるのをこらえた。
あの絶妙タイミングで「予測」を吐く男はきっと競輪党であると俺は確信するが、もちろん「直撃インタビュー」など叶わぬことだ。
この先、俺はいったいあと何枚の、新しい免許証を手にすることができるのだろうか。
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