明日から開幕する前橋GⅢに稲垣裕之の名前があった。稲垣のGⅠ初戴冠はここ前橋の寛仁親王牌だった。脇本雄太-稲垣裕之-村上義行の並びだったと思う。資料を見ると二〇一六年の十月十日とあった。とれそうでとれない(調べると二〇〇七年に松阪ふるさとダービーを優勝して以来の特別競輪制覇である)稲垣をずっと見ていたから、車券をはずしながらも、親類縁者でもないのに、大きく安堵したことを忘れないでいる。
もうひとつ忘れないのは、歓喜の日からさかのぼること約二か月、その年の八月に開催された松戸オールスターでの惜敗だ。村上義弘-稲垣裕之-岩津裕介の主導権、やっと獲ったと思いきや、岩津に抜かれて落涙した稲垣を「悲運の男」と拙稿に記したのを憶えている。
あれからもう九年なのかまだ九年なのか。不思議な時間の感覚をおぼえる私だった。
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