過去に競艇の電話投票で、三個の競走を置きっぱなしにする機能があった。所謂「転がし」というやつだ。斬新なアイデアに驚いたものだが、当時の俺は競艇の電投を持ってなかったし試したこともない。
それよりずっと前の話だが、A3番の方眼紙を買ってきて、150円の配当を転がした場合、200円を転がした場合、300円、400円、500円……1000円配当を転がしたら幾らずつ増えていくか、という表を作成したことがある。それも三つどころか十回転がすまで計算したもので、まァ何を考えて生きていたのだか――。
一点で買えるのは第五競走、第八競走、第九競走――! と息巻いて転がすのだが、一発目駄目、二発目も駄目で結局最後だけ当たる。もともと固そうなところを選んでいるのだからトリガミだ。状況が変わっているのなら宗旨替えすればいいものを、想念の予想を消し捨てるのは簡単じゃない。それならばと駒を増やしてドンと買うとこれがまたこない。当時の愚かな一景だ。
山松ゆうきちの漫画に登場する「しりあす甚一」「ポカ熊」は「三段飛び」にあと一歩で大金を掴み損ねるのだが、作者は後年、こういう状況でのギャンブルは九割九分はずれるものだ――そんな述懐をしている。
俺の現在の理想のギャンブルは「33.4倍」である。
道中何とかして種を増やす。楽な気持で最終レース。三千三百四十円附近の配当を三万円とる――。百万にするのにどういう掛け算でも構わないのだが、千円を十万円買う度胸はないし、万シューを一万というのも……。ま、財布に千円札しか入っていない(実際は財布を持たないのでポケットか鞄にだが)俺の戯言である。
貧すれば鈍する――の典型だが、今年はこのミッションを何回トライできるだろう。
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