一定の歩幅と一定のリズム、丹田を意識した正しい姿勢の男女が早歩きしている。犬を従えた散歩に犬に曳き摺られるような散歩。屈伸運動に余念がないタンクトップ姿の女性は、いかにもこれから走りますという風情だ。ビニール袋の中の紙袋からマクドナルドの匂いがこぼれ、二つむこうのテーブルで男が食べ始めた。この手があったかと羨ましくなった俺の方は、コンビニで買った百円珈琲を飲みながらスポーツ新聞のギャンブル欄を読んでいる。今日一日の時間をやり過ごす算段をしている。――べつに平塚の競輪ダービーに縛られることもあるまい。
足もとに独特の頸運動をしながら鳩が近寄り、頭上には青空だ。この綺麗な天空の青色を形容する言葉を知らない自分がもどかしい。
早朝の公園だというのにイヤホンからは夕刻の唄が流れている。村八分の『水たまり』だ。
〽日が暮れるまで/夕焼け見てた/ぼろぐつはいて眺めてた/がきの頃を思い出して/しゃぼん玉/吹いてきえた/吹かれてすぐ音一つ/おちる下に/水たまり/風に吹かれて水たまり/風に吹かれて吹きだまり/おちる下に水たまり
まだ午前七時前なのに俺は心中で呟いている。――早く日が暮れないかしら。
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