本欄のタイトル「(仮)競輪は軀に悪い」は、三十七歳で逝ってしまった作家高木功の発案から頂戴している。以下、『映画芸術』一九九四年秋三七二号の編集後記から引く。
〈(前略)「地球の迷い方」の連載が今号で完結した高木功が、嘘みたいに死んでしまった。(中略)十日前ぐらいの電話では、(中略)次の連載、二ページぐらいの身辺雑記でタイトルは『人生は体に悪い』っていうのはどうですかと言う。俺は思わず笑い、うまいタイトルだなと感心した。だけど、高木よ、死んじゃうなんて「人生は体に悪い」どころじゃないじゃないか。(後略)〉――執筆者の「俺」は編集長の荒井晴彦だ。
数年間一緒に働いた後輩に卓球の水谷に似ている男が居た。よくいわれんるんですよと返ってきた声音はあまり嬉しそうでもなかったか。東京五輪花盛り、テレビのチャンネルを替えると、ありとあらゆるスポーツの試合が映っているが、卓球は選択肢の上位だ。が、詳しくはない。ルールはわかるけど、チキータ、逆チキータ等々、頻繁に飛び交う用語も理解していない。試合の駆け引きもほぼ知識ゼロ。ネット・イン、エッジをかすめた打球で得点した時ゴメンと手を挙げるのがエチケットらしいが、素振りが各国微妙にちがうのがおもしろい。
卓球は数秒、数十秒で加点されるので観ているほうも緊張させられる。もちろんラリーが長くなっても気が気じゃないからドキドキする。気がつくと呼吸が浅くなっており深呼吸したりするから可笑しい。
卓球は軀に悪い――?
競輪は今夕から川崎GⅢが開幕する。男子のほうは定員に四人減の七十七人による四日間で面子はかなり小粒だ。それでも優勝賞金三百三十万余と高額なのだから、皆が目の色を変え、いきおい闘いは烈しくなろう。
競輪も卓球も軀に悪い――。
今晩はそんな夜になりそうだ。
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