二次予選――第十一レース。
古性優作と荻原尚人のゴールはかなり際どく見えた。
なかなか決定が出ない。
今の競輪はタイヤも微差も判定が早いから、長い写真判定の相場はたいてい同着である。
案の定両者の一着同着が発表された。
当たり前だが勝者二人だからインタビューも二人だ。
ほどなく二人が出て来た。
順番にインタビューを受けている映像を見ていた。
テレビの音を消してあるので受け答えの内容は知れないが、古性は浮かない顔、逆に荻原の方は晴れ晴れとした表情に映った。
インタビューアーとのやりとりが終わり、選手が退場するときも、二人から放たれる雰囲気は明暗を分けたままだった。それは解る。同じ一着でも、古性には悔しさの残る一着であり、荻原にとっては大の付く金星なのだから。
荻原が観客の方に両手を挙げているのを見て、映画『ロッキー』のテーマの旋律が頭の中で鳴った。
しかし選手は大変だ。
どんな一着とて(たとえば大量落車、失格による繰り上がり等々)大概は客の前に出て来て何か言わなければならない。
昔は勝利者インタビューなぞ大レースの決勝くらいだった。
だんだんに記念競輪でも、S級シリーズでも、決勝以外のレースでも、と広がっていった。
インタビューがふんだんに流されることも、競輪選手の「露出」が増えることも、当今あたりまえのサービスだと思う半面、むかしの、そんなもの何もなかった、商売っ気のうすい競輪場を懐かしく想ったりもする。
あの頃は、私をふくめて大半のひとが、たとえ優勝戦のあとにインタビューが催されていたとしても、レースが終わったら一目散に帰路についたものだ。半端じゃない混雑ということもあったけど、なんであんなに、とっとと競輪場から立ち去ろうとしたのだろう。
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