一昨年の「滝澤正光杯in松戸」の岩本俊介と和田健太郎を忘れないでいる。
その年、和田は初めてのグランプリ出場を決めていた。年末に大一番を控える選手は十二月を調整期間に充てることがほとんどで、和田が記念を走ると聞いて思ったのは、今回は餞の壮行会だ。岩本-和田で毎日がんがん逃げてしまうのだろう。お得意の単純な思い込みで和田の頭から三日間(初日・準決・決勝)買った。
初日――混戦を一気に捲った岩本に和田は付いて行けず、岩本二着で和田七着、「おやっ?」和田よくないなあ……。
準決――岩本の先行を和田はハコ無風ながら四分の一輪差せず、「ふぅむ……」。
決勝――別線の二段駆けに上手く乗った岩本が直線一気で和田は一車身マーク一杯だった。
岩本が強かったのもある。もちろん短走路というのもある。和田の状態も芳しくなかった? どうあれ和田には大きなもの足りなさを感じ、迎える大舞台にすくなくない不安を抱いた。
思い通りにならなかった車券の腹立ちも手伝ってか――「グランプリは真っ先に和田健太郎を切る」――早々にそんな記事を書きつけた記憶もある。
半月後の十二月三十日。「競輪グランプリ2020」は、あっとおどろく(失礼容赦)和田健太郎の優勝だった。
本日より「開設72周年記念燦燦ダイヤモンド滝澤正光杯」が開幕する。あたりまえだが――千葉競輪場が周長250㍍の新バンクに生まれ変わったことにより――「in松戸」の注釈ははずされている。
第十二競走に和田健太郎の岩本俊介の名前があった。
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