犬伏湧也の作戦はいざ知らず、私の作戦というか希求は、残り二周半の所で突っ張らず下げる。第一関門クリアと安堵したが、誘導が残っている一本棒には一抹以上の不安を覚えた。七番手からカマシか捲り。もうどちらでもよかった。ただ吉田拓矢が本腰を入れ逃げ始めた時点で、四点買った車券の内の二点はほぼ消えた。五番手の清水裕友が仕掛けそうで仕掛けないのでやきもきしていたら、三番手の嘉永泰斗が捲って出た。その捲りに古性優作が乗るのを左目で見乍ら右目で犬伏の捲りを視認する。競走も車券も佳境をむかえた訳だが、数秒後、河端朋之に併せられる形になった犬伏が膨れ、換言するに犬伏の捲りは一車も出ずに終わった。ま、いいか。思いっ切り、捲りで、獲りに行ってくれたんだから。
GⅠを優勝するには段階があり、まずは確定板を挙げて、その先に戴冠が待っている。そんな持論を嘲笑う様に、GⅠの決勝に初めて乗った嘉永が一発自摸で優勝した。二着には苦況を乗り越え松本貴治が入った。三度目のGⅠ決勝で初めて表彰台に立ったのだから、いよいよ松本の初戴冠が近づいた事になる。と私論を繰り返しても説得力は薄かろう。
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