関東の競輪場に遠征しているその選手が走り終わって三十分ぐらいかな、母親から社に電話がかかってくるんだ。お忙しいところ恐縮ですが……いつも丁寧に……息子が落車していないかどうかだけ教えてくれないでしょうか、と。着順などぜんぜんきかない、ただただ、落車の有無をたずねる電話で、教えていいものかどうかはわからないけど、親ごころにはさからえない。きっと関東以外なら土地の予想紙におなじような電話をしてたんじゃないのかな。
むかし、同業他紙のE先輩からきいた話だ。むかしとは、インターネットもスピードチャンネルも、もしかしたら電話実況サーヴィスもない時代である。Eさんはいつしか「その選手」をなんとなく応援するようになったらしい。その選手の名前を橋本忠延(高知・53期)と記憶しているのだけど、還暦をすぎてから記憶の混同がはげしく、自信ないので、まちがっていたらご寛恕ねがいたい。
橋本強悲願の地元松山記念優勝に、四国~橋本の連想でふるい記憶がよみがえった。
しかし松本貴治は落ちついていたねえ。あの腹のすわった仕かけが、地元トリオの一着・三着・四着――異次元の新田祐大をかぞえなければワンツースリー?――を生んだのだろう。
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