中野慎詞(岩手・121期)の二十七連勝――チャレンジ九連勝→A級九連勝→S級九連勝→S級S班(冗談です)――が大きな話題となっているが、もう一人の早期卒業生、太田海也(岡山・121期)も――ちょっとだけ回り道をしたけど――今日(十七日)S級特進を決めた。
昨日も記したのだが今回は「絶対にS級に特進する!」そんなオーラを――テレビ画面越しにも――全開に漂わせていた。
予選も準決も思いっきり勝ちにこだわった(あたりまえの話だが)。両日とも後ろは中国筋のベテラン大瀬戸潤一郎(広島・95期)だったが、かまわず捲り勝負だった。初日は九秒〇、準決は八秒九で奈良のバンク・レコードを更新してしまった。
決勝は太田の後ろに森川康輔(岐阜・111期)、いわゆる他地区の連携だ、誰かさんに言わせれば即席ラインとも言うらしい。番手が四十歳の大瀬戸でも平然と捲りだった太田である、森川は二十五歳、地域も遠い、しかも負けられない一番なら黙って捲り、ぶっちぎりだ。薄目はどこだと熟考する男ひとり――。
本番は愚者の薄目探しをあざ笑うかのように太田-森川の逃げ切り-マークで着差は一車身、一人旅ではなく二人旅であった。並びできれいにはいった途端、そうか、そうだよな。口に出さずにつぶやいた。
後ろに近しい筋の選手の場合は案外甘えることができる、というか「太田、お前が勝てばいい」くらいの親密さをも受けていよう。むろん森川だって似たような言葉をかけるやも知れないが、当の太田からすれば「岐阜の選手に付いてもらっている」遠慮と緊張があって当然である。
時折見ているじゃないか。他地区ラインが思いもかけずドカンと行ってしまう光景を。
遠距離恋愛ゆえに燃えあがる。遠距離連携ゆえにハッスルする。
いろいろごたくを並べたけれども、ま、ただの後講釈にすぎない。だいたい、単純に、太田が、A級卒業は逃げ切りで、と意志しただけの話かもしれない、きっとそれが正解だろう。
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