清水裕友がはじめて〈防府記念〉を優勝したのは六年前の今日(十一月四日)であった。そこからの清水の選手生活がずうっと順風満帆だったわけではない。良い年あり悪い年もあり、好調でむかえた地元記念も、そうじゃない時もあったはずだ。それでも毎年毎度、なんと六回も勝ちつづけて来たことは賞賛に値する。
画に描いたような展開ながらあっさり七連覇が消えた。と記すのはおそらく的はずれだろう。得てしてありがちな競輪。それも大雑把にすぎる。太田海也の先行が、その乗車フォームが、あまりに流麗ゆえ、強烈なハイ・ピッチにも余裕のペース駆けにも見えてしまうと述べれば、またまた素人が何いうかと笑われるのが落ちだろうが、小指の先くらいの因をそんなこんなに求めてアツさを冷ますくらいは許されよう。
スタートで松本貴治が本線の後ろになり「いちおう出来た」と声に出さずにつぶやいた。残り二周半から赤板にかけて太田が吉田拓矢をつっぱっり隊列が元に戻った。車間が空いて追いなおす羽目となった桑原大志に一抹の不安を抱きながらも、しかもまだ二周もあるというのに「出来ただろう」と念じたが、どうやらと言うかやっぱり出来てはいなかった。最終二角附近から吉田の仕掛けに併せて捲った松本のスピードがあきらかに違う。がくりと体の力が抜けるのが自分でもわかった。
三着薄目のつもりで買った選手のひと捲り。そんな結末をむかえた競輪の味わいは複雑である。むろん苦々しくはあるのだが、微量の蜜が混ざるというか、含味することができる気もする。要するに丸落ちなのに満更でもない気分なのである。などとほざいている愚者はもはや、「負けず嫌いの勝ち知らずさん」(SIONの『胸を張れ』より)ですらないらしい。
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