小田原の周年記念といったら真夏が相場だったから、春の開催に若干妙な気がしなくもないが、軀にしみついているのはあくまで、シャツが汗でべとべとになる、強い日ざしに照らされながら競輪場まで歩く、若き日の小田原競輪場だから、テレビの前で煎餅かじりながら見ているぶんにはそんな意外もうすっぺらである。
初日の第十一競走、いわゆる予選のメインは北井佑季-福田知也でいかにも固く組んである。できれば北井には突っぱってもらい三番手小島歩まで面倒を見てほしい、そんな制作者の意図を感ずる地元番組だ。
北井-福田-小島-瀬戸栄作-中村健志-藤井將-磯川勝裕-佐藤真一-大薗宏の三分戦は青板すぎに動く。青板のバック線を目がけて磯川が仕掛ける。が、北井も猛然と突っぱる。だけど磯川ラインもあきらめずに番手の外あたりから併走している。(おい二番、そこ絶対はずすなよ)は二番車瀬戸の三着を買っている俺の内なる声だ。大丈夫のように見えた。しかし、本線以外の別線と別線が入り組んだ四角から直線にかけての中途で二番が車を下げはじめ、俺はがくんとなった。
地元三人できれいに入るか。
さすがに小島の成績は寒いから三着をずらすとすれば誰を採るか。
車番から察して中団に二番の瀬戸で、猫の首に鈴を付けに行く役回りは七番手の磯川なのだろう。そこまでは誰でも考える。あとは「そのあと」に何が待ち受けているかだ。
要はこのレース、青板バックから赤板までに勝負の分かれ目がやってくると言えなくもない。二周を残して早脱力、事切れる(むろんそれは俺の場合で真逆の人もたくさんいることだろう)競輪は、今流行りのなどとは言わないが、昔にはあまりなかった類の競輪で、面白いとか面白くないとか、コクがあるのかないのか、好悪も人それそれぞれだろうけど、手を出したくなる、賭したくなる競輪ではある、すくなくとも俺にとっては。ま、それも二周半突っぱっても大丈夫という北井みたいな存在がいるから言えることなのだけど。
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