六月の雨の日の午前中、高い煙突が聳えるゴミ焼却場から続々と収集車が出庫する。一台に男と男の二人ずつのチームが各方面へ散ってゆく。
――男たちの何人かは出掛けに競輪の電話投票なぞ打っただろうか。いやメッカ川口の膝元だし、オートレースのほうか。
能天気な俺の想像は膨らみ、運転席と助手席の隙間にギャンブル欄が開かれたスポーツ新聞、の絵まで浮かんだ。
昔は朝から雨が降ると、現場仕事のなくなった労働者たちでギャンブル場が賑わった。人人人の松戸競輪場は恐いくらいで、北松戸駅は駅員を無視して改札を突破する無法地帯と化した(ちょっとオーバーか)。パチンコ屋も普段の入りとは瞭かに違ったと思う。“雨の日の湿気とパチンコ台の関係”も大事だが、客が増えれば台選びそのものがままならない。
ショーケンと岸恵子の『約束』を浅草の二番館で観た日も朝から雨で、映画館は満員だった。『約束』と東映系のポルノ二本の計三本立てだったと思う。『約束』が始まって十分十五分ぐらいだろうか。前の方の席から怒気を含んだ声が発せられ、それが何カ所かに飛び火した。そりゃそうだろう。東映の大奥絵巻ポルノ目当ての客が、延々と濡れ場のない『約束』を見せられては堪らない。俺の隣のニッカポッカの小父さんは軽い鼾を立て寝てしまっていた。
妙にザワザワとした館内、俺とおなじ肩身の狭い思いで『約束』を観させられた「同志」たちよ、今いずこ。
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