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どこへでも往ける

2018/04/05 8:32 閲覧数(755)
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 予想紙の記者から日刊紙の記者に転職するケースは昔からちらほらあったが、最近はとみに数が増えた。
 一緒に仕事をしたり遊んだりした元予想紙の記者が、テレビの競輪中継などに解説者として出ているのを見つけると、懐かしい気分が起こる。彼らの予想をそのまま鵜呑みに買うことはないにしても、俺の車券が駄目なら奴らの提示したフォーカスになればいい――! そんな身内の応援団風に成り下がる俺がたまに居る。
 ドラマ『前略おふくろ様』の劇中、元ヤクザの五十年配の板長・秀次(梅宮辰夫)が、修行十数年の三番板前・三郎(萩原健一)と屋台のおでん屋で一杯やっている。老いた母親を案ずる三郎に郷里にも近い仙台の新店への移籍を薦める秀次だが、願ってもない話でありながら、敬愛する師匠との別離にふんぎりがつかない三郎だ。「サブ、この話、いいと思うよ。どうだ、ひとつ、ここらで跳んじゃ――」と背中を押す秀次が「しかし――、ちぃとばかし寂しくなるな――」とぽつり呟く。
「先輩――」
「うん――?」
「かすみちゃん、アメリカに行っちゃうんですか――?」サブの元恋人かすみ(坂口良子)のアメリカ移住の噂を三郎が秀次に確認する。
「ああ、そうらしいな、女将さんに話してた。――若いやつはいいなあ……どこへでも往けて――」
 梅宮辰夫の代表作にテレビ・ドラマを挙げるのには異論もあろうが、『仁義なき戦い』の梅宮の凄味もいいが、『前略おふくろ様』の寡黙な梅宮は秀逸である。
 若いやつはいいなあ――の科白が身につまされる年齢になった俺だ。

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