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完済する芸人

2018/07/04 20:31 閲覧数(778)
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 俺が三十数年前に借りたプロミスの金利は年29%余だったか、それともまだ三十を超えていたか。
 はじめてのプロミスなるテレビ・コマーシャルには隔世の感を受けるが、サラ金はサラ金だろう。
 俺がはじめて街金で金を借りたのはお茶の水の学生ローンで、事務所は古い雑居ビルを階段で上がった二階の一室だった。借りた五万円から一ヶ月後の利息が天引きされた額と、厚紙(タイム・カード大を縦横に少しずつ拡げたぐらいのサイズだったと記憶する)に記された返済計画表を手渡された。
 ガンガン売れ出した芸人のインタビュー記事を何かの雑誌で読んだことがある。男はずっと利息を払うのがやっとだったサラ金の借金がどんどん減るようになり、ついにはゼロになったときの感情を、あっけなくと表したのだったか。
 俺はその昔、その芸人と一緒に仕事をしたことがある。俺と一緒になるくらいだから所謂ドサまわり、まるで売れていない時代のはずだ。立川競輪場内にある会館で催された演歌歌手のミニ・ライヴをラジオで流すための公開録音だった。芸人と相方の二人組が司会だったのか、それとも司会は別に居て漫才をやったのだったか。ともかく競輪の宣伝もどきをちょっとだけ挟むというような構成だったと思う。
 その日の子細はほとんど忘れているが、二人が用意された弁当を使っている絵だけはぼんやりと頭の片隅に残っている。
 二人とも下積み時代の或る日のしょぼい営業で隣にいた、頭髪にハイライトを入れている競輪記者など記憶になかろうが、俺の方は今や引っ張りだこの活躍の芸人をテレビで見かけるとちょっとした感慨が起こり、コンビが売れはじめた矢先に天国に逝ってしまった相方の顔が思い浮かんだりもする。
 余談になるが、昔、中野駅の近くにサラ金数社が入居し、それぞれのキャッシュ・ディスペンサーも設置してあるビルがあり、俺もよく利用したのだが、二社、三社、支払い、支払い、引き出しと各階を往ったり来たりしていると、どこの階でも前後ろがおなじ人間となることがあり、まるでラインを組んでレースをしているようでもあった。

 
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