その男は、祈り続けた。
試走やや劣勢ながら、このメンバーなら負けられないと踏んで、アタマ勝負を決めていた⑧金子大輔が、6周3コーナー、逃げていた③鈴木宏和を注文通りに捌く。
同時に3番手争いは、⑤栗原俊介に⑦阿部剛士が迫る展開。勢いに勝る阿部剛が内を突き、やや栗原俊が外に膨れたように見えた。
これで阿部剛が3番手逆転なら、その男の車券は完成する。しかし栗原俊が残ってしまうと、その男の車券は紙くずとなり、露と消える。
最終4コーナーの立ち上がり、内を覗き切って、わずかに前に出たように思えた。その男の目には、そのように映った。実際はどうであったか・・・今となれば、ネットに繋ぎ、リプレイを見ればいくらでもそれを確認できる。しかし、実際はその時どうであったのか、もはや特に興味は無い。
その男の目には、阿部剛がわずかに前に出たように思えた。
そこから、その男の目にはそのまま阿部剛が3番手をキープして、ゴールに駆け込み、8-3-7、ハイ的中!、ハイごちそうさん!・・・という事になっている。今でも頭の中では、そういう事になっている。例え数分後、写真判定にも持ち込まれず、「ハイハイご苦労さん、これで確定だよ」と言わんばかりに確定板に「8-3-5」と表示され、払い戻し金額が表示され、そのうちに何事も無かったかのように夕方練習が始まり、数々の競走車のエンジン音がこだまする、その時間になっても、その男の頭の中では、8-3-7という事になっている。いや、8-3-7という事にしてくれよ、頼むから・・・
・・・そうでないと、その男が、もともと「8-3-5」を買うつもりで居たのにも関わらず止めてしまったというその事実を、水に流す事が出来ないのだ!
時計の針を少し元に戻そう。
2015年4月11日、浜松オート第12レース、発売締切15分前・・・
その男は、この時点までに蓄積されていたマイナス分をひっくり返すための策を考えていた。
そう。言うまでも無く・・・やっぱりその男はその日も、マイナス展開だったのだ。
まぁ、それは良しとしよう。この話の本題では無い。戦い方としては大いなる課題ではあるけど。そこまでにマイナスにならないようにするにはどうしたら良いか考えた方がいいのかもしれないけど。
この第12レース、格で考えれば⑧金子大のアタマで良さそうなメンバー構成ながら、10m前の⑤栗原俊が上回る試走をマークした事で、人気が少し分散されたか、3連単で10倍を切るオッズが無い。試走は試走、あくまでここは⑧金子大が格の違いを見せつける・・・相手はその⑤栗原俊と、前団でうまく前を叩いて行ければ残りそうな③鈴木宏和でいい・・・⑦阿部剛はそもそも金子大と同ハンなのが見込まれ過ぎ、序盤の展開が向かないだけにここは厳しいだろう・・・そう、ここは8-3-5、8-5-3の2点勝負で良い。このそれぞれに10枚ずつ投入すれば、1日収支はプラスに転じて決着だ。
・・・そこまでの考えが確かにあった。そこで思考を止めてしまえば良かったのだ。それであれば、結果的には「8-3-5」で的中車券を手にすることが出来ていた。
「・・・試走やや劣勢ながら、このメンバーなら負けられないと踏んで、アタマ勝負を決めていた⑧金子大輔が、6周3コーナー、逃げていた③鈴木宏和を注文通りに捌く。
同時に3番手争いは、⑤栗原俊介に⑦阿部剛士が迫る展開。勢いに勝る阿部剛が内を突き、やや栗原俊が外に膨れたように見えた。
それでも栗原俊が残れば、その男の車券は完成する。しかし阿部剛が3番手逆転なら、その男の車券は紙くずとなり、露と消える。
だから少しヒヤヒヤだったけど、最後は栗原俊が3番手をキープして、ゴールに駆け込み、8-3-5、ハイ的中!、ハイごちそうさん!」・・・という事になっていたのだ。
なぜそこからいろいろ思考を巡らせてしまったのか、その男自身にも分からない。・・・いや、「分からない」というのは語弊があり過ぎるだろう。現実から逃げ過ぎている。マークミスをしない限り、明確な意思を持って購入した車券なのだから、何らかの理由があったはずなのだ。
「③鈴木宏の、レースでのタイムが少し見劣りする。そのような③鈴木宏がもし2着に残るとすれば、その時3着に居るのは⑤栗原俊では無いだろう。⑤栗原俊がミス無く乗れれば2着は堅そうだ。だから③鈴木宏が2着だとすれば、⑤栗原俊がミスした時だ。という事は、代わりに⑦阿部剛が入っているだろう。つまり、8-3-5ではなく、8-3-7になっているだろう。でも、⑤栗原俊が2着の展開なら、3着は③鈴木宏でも⑦阿部剛でもありそうだ。あとは、確かに⑦阿部剛とて、1対1で⑧金子大には勝てそうに無いけど、前の2人が共にミスれば2着も面白そうだ。・・・おっ。配当もいい。よし。ここは8-7-35も押さえておこう。」
・・・なんだ。ハッキリ覚えているではないか、その理由を・・・。
・・・理由は覚えているのだが、その結果どのような車券になってしまうのか、という事をその時には思い巡らす余裕が無かった、という事だろう。
そう・・・、こうやって手元に残した車券の目は、「⑧のアタマ固定、③⑤⑦の2・3着付けのうち、8-3-5を除いた5点」という、盤石の構え方のように見えて、いかにも抜け目が来そうな、壮大なオチが待っていそうな、ユルユルの車券であった。
その瞬間も覚えている。
発売機から出てきた車券を目にした時の事を。
そして確かに感じた。
「これ・・・8-3-5とか来ちゃうんじゃないか」
「しかも8-3-5って、最初に買おうと思っていた2点のうちの1点じゃん」
その刹那、発売締切を示すアナウンスが流れ、退路を断たれたその男は、その数分後、魂が抜けたように金網の前に立ち尽くしていた。それはいつもの情景。浜松オートの最終レースが終わった後に、よくある風景。珍しい事では無い。その男はいつもそうだから。珍しい事では無い。
・・・そう。普段のその男であれば・・・
・・・それから3時間後。
同日、伊勢崎オート第11レース。
今期No.1レーサー、30mハンデを背負う⑧中村雅に対し、新進気鋭の軽ハン32期勢が挑む構図。その最先鋒、①佐藤裕児が0mハンデながら試走3.33、ハイペース必至。試走3.30の⑧中村雅と人気を二分、続くのが20m最内の②松本やすし、これも試走3.34の好エンジン。3連単の1番人気は1-8-2で4倍近辺、しかし②松本やすしが最内からキッチリスタートを決めれば、①佐藤裕児と共にハイラップを刻む展開になり、捌く必要の生じる⑧中村雅は6周回では間に合わないだろう・・・そう踏んだ、その男は、自らの携帯に、2・3着が人気の裏となる「1-2-8」という車券の目を刻み込む。ここに分厚く特券勝負。そして1-8-2は敢えての消し。
数分後、歓喜に包まれる男の姿があった。
3連単「1-2-8」、1,630円。
全てを水に流す、一打逆転のタイムリーヒット。
続く最終第12レース、ゴール線では持っていないと思っていたがよく見返してみたら持っていたという3連複「2=7=8」の5,450円もダメ押しでちゃっかりと掠め取り、その男に女神降臨。
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2015/04/12 8:35 閲覧数(970)コメント(4)
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店長(座長)
やらかし気味に的中を逃した日は、たいてい、
追えば追うほど負債を増やす結果になりますから(笑)
パッとひらめいた車券を素直に買った時は的中率が高く、あれこれ考えた末に買った車券は意外と当たらないんですよねぇ。
まあ、逆のパターンが多々あるのが博打で、
だから面白いのですが(笑)
今日は最初から流れを掴み、「大名博打」になるといいですね。