寺崎浩平はすかさず叩いた。競り負けた脇本雄太も、踏み遅れた武藤龍生も、あきらめずに最後まで踏ん張った。ひとりのはんちくも混ざっていない競輪だったと思う。
目立ったのはなんたって佐々木眞也。踏み出しで脇本をいなして、もう一度きた脇本をも軽く止めた。寺崎浩平-佐々木眞也の車券を持っていたらたまらんねえ。
脇本雄太は今回、二度も寺崎浩平――福井-福井の後輩――の番手を奪われる憂き目に遭った。以前も記したことがあるが、脇本もそろそろ競輪を覚えなければいけない時期にさしかかっているのだろう。もちろん今はいい。あんなに強いのだから。ぜんぶ前を回っちゃえばいいのに、と他人事のように言いたくもなる。でも競輪という競技はそうもいかないのだ。一流と目される選手が自在や追込になりそこね苦戦する様をたくさん見てきた。戦法を変える端境期にものを言うのは、ヨコの技術もさることながら、競輪を手の内に掴んでいる――競輪を覚わっている――かどうかが問われる。などと記せば、ド素人が何ほざくと𠮟られそうだ。
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