八九九勝が二月二十七日だから、リーチがかかってから三ヶ月以上、まさかの「流局」を心配してしまうほど間が空いたが、昨晩(六月三日)無事、神山雄一郎(栃木・六一期)の通算九〇〇勝が達成された。
場所は函館。種目はS級予選。決まり手は追い込み。蕗澤鴻太郎が絶妙な突っ張り先行から、これ以上ない絶妙ペースで約二周をすいすい、きっと神山も付けやすかったはずだ。四角で車間が空いて(空けたのかもしれないけど)ひやっとしたが、楽に回ってきたこともあり、直線でしっかり詰め二分の一車輪抜いた。きれいな関東三人決着が大記録に華を添える。神山おめでとう。蕗澤よくやった(功労者だ)。
函館ナイター初日は別府ナイター最終日と重なったため、スピードチャンネルではB番組(第二チャンネル)扱いで、我が家のテレビには映らない(ケーブルテレビから引いているのでトップチャンネルのみの視聴契約)。だからリアルタイムに見届けることはかなわなかった。テレビに映らなきゃパソコンでも携帯でも開けばいいでしょうよ。おっしゃるとおり。正直に申せばそこまで熱心に追っかけてもいなかった。
よって冒頭の「密やかに出た」は、あくまで私的感情に基づくタイトルである。
神山雄一郎がはじめて優勝した大レースは函館のふるさとダービーだった。それは憶えていたけど、あらためて資料に目を通すと、神山はS級の初勝利もここ函館で挙げている。先日の宇都宮記念では「地元での九〇〇勝達成」に大きな注目が集まったが、出そうで出ない、勝利の女神も微笑まず。皮肉なもので次の函館ですっと、ぽんと、決して簡単にではないんだけど、簡単に出たようにも見える。まことに勝負事とは不可思議なもので、番組、相性、体調、感情、余裕、精神……きっといろいろな理由を求めることもできるのだろうが、逆に真逆の想念が起こったりもする。
二〇二三年、六月三日、函館、第八競走、神山の九〇〇勝は「出現」する――それはきっと予め決まっていたことなのだろう、と。
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