一昨年の出来事。僕は、一日で約200万円勝利した。それも1レースで。

　僕は、ネットで車券を買った場合でも、購入履歴からまたもう一度紙に書き写してレース視聴するのですが、その日は紙に書き写している時にミスが発覚した。

　あーあ、やっちゃった。でも、一応そのレースのオッズを調べてみようとみてみると、1500倍。もうこのオッズをみた時点で敗北は確定したと思って食事に外へと出た。

　しばし休憩。をして気を取り直し画面を開く。

　「残高：2031300円」

　人間というものは、突然衝撃的なことが起こると何もできないもんでして、200万に驚くより、まずはキリよく1300円を次のレースでどう使おうかな？なんて思ってしまう。

　その4秒後くらいにやっと、

　「とうとう俺もやってしまったか。競輪で100万とか都市伝説だと思っていたが、今ここにあるのは残高200万。決して都市伝説でなく事実だ」

　なんて一人の部屋で喋ったりする。そしてその4秒後くらいに、こう思う。

　確か宝くじで高額当選した人には、「不幸にならないための手引き」が貰えると聞いたことがある。ということは、それが僕にも競輪協会とかから「偶然当たったあなたが、この勢いで会社をやめてしまわない手引き」が届くのだろうか。

　一応メールボックスを見てみるが、いつも通りの静けさ。まぁそうか、2億とかに比べれば雀の涙程度の金額だしな。

　ただ一つ言いたいことがある。こんな若者に急に200万もくれたら「偶然当たったあなたが、この勢いで会社をやめてしまわない手引き」なきゃ社会人辞めちゃうかもよ？

　まぁ、誰も手助けはしてくれないことは分かった。では、自分なりにこの200万の使い道を決めなければ。

　

　ここから天使と悪魔の駆け引き始まる。

　ではまず、王道「貯金」はどうだろうか。

　即答で却下。正直こんな大金手に入れることはまずないから、どうにかして使いたい。

　では、「車」はどうだろうか。

　普通にいらん。

　では、「バイク」は？

　これもいらん。最近は乗る気も起らん。

　天使さんの意見はどうも堅実すぎる。それを傍目に悪魔が悪魔のような笑みでこちらを見てではないか。そして口を開く。

　「答えはただ一つ。増やすの一択あるのみ！」

　おお、流石。なかなか痺れる意見だ。

　決まった！今回の200万あんたに託すぜ！

　「天使さんは、もうご帰宅していただいて構いません。追って連絡しますので。」

　天使さんを半ば無理やり帰宅させ、悪魔さんとサシの話し合いが始まった。

　「あんた、この200万どうやって手に入れたかは覚えてるか？」

　「ええ、競輪で」
　
　「では、競輪で倍にすれば良いのではないか」

　「いえしかし、それは大変難しいことだと…」

　「何を言っている、一度できたことがなぜもう一度できないのだ」

　なんと簡潔かつ説得力のない説明なのだ。しかし、もうこの200万はあんたのもんだ。乗るぜ！あんたにどこまでも。

　「おれ、やるよ。やって倍にしてみせるぜ！」

　悪魔がとぼけた顔でこちらを見ている。そして口を開いた

　「倍だと？計算してみろ！その次を！」

　「200、400、800、1600……」

　な、なんと恐ろしいお方だ。このお方は僕の想像を遥かに超える次元で生きている。

　「も、もしやあなたこそ、人類に英知をもたらした「創造神」では！？」

　「ふん、じきに分かるさ。私の正体が何者かなんて。では早速、お前の今まで培った知識で、この200万を巨万の富へと変えるのだ！」

　悪魔は黒い影へと姿を消していく。

　「私に本当にできるのでしょうか。あなた様が私のかわりに！」

　「ねだるな！さすれば、与えられん」

　どっかの誰かが言った言葉を残し消えていった。



　と、5分程度上記の取引を行い、増やそう！という結論に至る。

　しかし、決して真似はしないでください。なくなりますよ。200万なんて。ホント瞬く間に。

　実体験では、約5日で200万無くなりました。一概にいえませんが、大抵200万ものあぶく銭を手に入れれば、本来の賭けのスタイルは崩れます。そして、勝ちたいという感覚より、賭けたいという気持ちが勝ってしまいます。そうすると、いらないレースに手を出したり、抑えの目が大量になったりします。当たらないことはないのですが、相当額ガミります。

　大金を手にすると、見えていたものが見えなくなってしまい、見なくていいものを見てしまいます。

　買い方が、下手であっても上手であっても、そのスタイルを見失わないでください。そうすれば、大金を手に入れたときに狂いませんから。

　画面上の200万も、帯封2つも同じ価値でありますが、同じ大切さには思えないかもしれません。私は自制が効きませんでした。だから、今度大金を手に入れるようなことがあったら、一度すべて現金にすると思います。

　
　僕の心の悪魔はちゃんと悪魔でした。天使はちゃんと天使でした。