和歌山記念初日の最終12レースの番組は見ているだけで飽きない。
昨年末のグランプリで新田祐大の番手捲りの上をあっさり捲ってしまった脇本雄太がいる。そのときマークだった古性優作も一緒だ。新山響平-新田-守澤太志-佐藤慎太郎の北大連携に注文を付けた松浦悠士もいる。また単騎の闘いらしい。その松浦との烈しい競りで失格の憂き目を見た守澤はもちろん新田マークで、奇しくも脇本-古性と新田-守澤の再戦が初日のメインとなった(配分が出たときからわかっていたことだけど)。
新田は今年一発めのGレース立川記念優勝を完全で飾った。決勝のイン粘りは強烈だった。松井宏佑-郡司浩平-和田健太郎-岡村潤-高橋雅之の南関五人結束を敢然と分断に行った。郡司との烈しい競りを凌いでの番手捲りは圧巻であった。数年前の新田を表すのに「強いけど常識に掛からないというか、良い意味でもそうでない意味でもわからない選手」と幾度か記した。が、今の新田は良い意味だけのわからない選手――いや違うな――何をやってくるかわからない超一流だと思い直す。ああ、立川は新田-佐藤慎太郎だったから、新田のイン粘りに因り佐藤と競る羽目になった和田健太郎の名前もある。うきうきするなどと持ち上げるつもりはないけど興趣の起こる一番である。
年末のグランプリ、新春の立川記念と妙に競輪が楽しい。車券はまるでわやなのだけど、早く来い来い決勝戦という気分になるのはやっぱり、競輪ヒエラルキーの最上層に駒が揃いつつある、そんな期待感を抱けるようになったからだろう。
いっそGレースの決勝だけ勝負するようにしようかしら。ふと思ったりもする。が、それじゃ一年間ノーホーラも大いにあり得るから止したほうがよさそうだ。
長らく深夜送迎のきつい仕事をしている友人のSは、やりくりして溜めた小遣いが一万円に達すると、ウインズに行って競馬のGⅠを単勝一本で勝負するという。Sのギャンブルには敵わないな、俺はいつも思う。元プロ野球選手の単勝何十万よりSの小銭の集まり一万円に幸あれだ。
♪時間がない おちつくのを 待ってられない 急いでくれ 雨の日 最低の気分で 低い方に流れる ゴミの中で もう行くぜ いつまでもそこで がっかりしてるなら 幸あれだ もう行くぜ たかがしれてる だけどこりない 俺にも幸ありだ――SIONの『早く来い』より。
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