競輪の予想をするとき、たまーにやる方法なのですがなかなか使いこなせていない。

　さかのぼること数年前。初めて京王閣競輪場に行ったときの出来事。初めて行く競輪場では車券を買わないと決めている。少しうずうずするものだが、案外場内をグルリ見て回るといろんな発見があって、ただアミューズメント施設に来ている感覚になってくる。

　歩き疲れ、広いスタンドにちょこんと座ってビールを飲んでいた。すると、空席ばかりのスタンドにも関わらずなぜか僕の横におじさんが座った。

　「絶対当たるっよ」
　
　酒に酔っているのか上半身を左右に振り、ニコニコ話しかけてきた。

　競輪場に行くと、たまにこんなようなおじさんに話しかけられることがある。大抵9車立てなのに6面しかないサイコロ振って予想しているようなおじさんだ。(かく言うぼくも、予想当たらなすぎてやったことありますけども)

　僕は、変なおじさんだなと思うもの嫌な気持ちはしない。楽しい話を聞かせてくれることが多いからだ。まぁしかし、大体は「この前100万取ったんだよ」的な武勇伝が多いけど。本当か嘘かは定かでないけど、あえてどこのどのレースで取ったかは聞かない。

　あと長年通っているおじさんは、近所のうまい店とかを色々知っているから、そういう競輪場外のことも教えてもらう。

　それで本題ですけど、そのおじさんの絶対当たる予想術が「心技体予想術」。まぁ、字の通り左から、心が強い者が一着、技のある者が二着、体力や筋力のある者が三着になるということらしい。うーん、難しい。なんだかわかる気もするんだけど、どうやって選手個人の心技体を読み取ればいいんだ？予想誌によっては「○○選手は、心技体を兼ね備え…」的なこと書いてあるし、そうなるとそいつは最強でありつつ三着になる素質もあるということなのか？

　やはりわからん。でも、この予想術確立したら一儲けできるかも、なんて思っちゃったりして。

　心が強いものが勝つ、これはわかる気がする。たまにまあまあな選手がダメだと思ったときに「あきらめ走法」することがある。あ！こいつ心失ってやがる。絶対一着にになんてならねーなってことがある。その反面がむしゃらでもいいから力の限り頑張るやつがいる。そして、そんなやつが勝つ。一概には言えないけども、これ。

　戦う前から負ける事考える奴いるかよ、馬鹿野郎！なんですけども、戦ってる最中に負ける事考える奴はいるんだよ、馬鹿野郎！なんですわ。

　昨日のオールスタードリーム戦？とっても面白かった。新田選手バック7番手辺りから、ぐいんと捲って一着だそうで。（忙しくて音声しか聞いてなかったので詳しく知らんのですが）ファンの人気に応えましたね。ええ、まぁ良かったですね。当たった方は。

　素晴らしい選手ばかりのレースで勝つっていうのは、自信が付いたりととても本人にとって有意でしょう。

　ところで、昨日一着を取った新田選手は心技体のどれを持っていたのでしょうか。逆に何を持ってなかったのでしょうか。

　では、これについてある研究室で議論してもらいましょう。
　
　「博士！一着ということは、強い心を持っていて、技と力はなかったと思います！」

　「おや、本当にそうかね。では、過去のレースを見てみよう」

　　～特別競走の輝かしいシーンを視聴中～
　
　「は、博士。新田選手は心だけじゃなく、技も力もある気がします」

　「おお、そうか。君にも分ったかい。彼は心技体を兼ね備えた良い選手なのだよ」

　　　　　　　（完）

　
　あぁぁあああぁーー！！、クソみたいな議論してんじゃねぇよ！なんだよ結局答え出てねぇーじゃねぇか。てか、答えは出てるんだよな「心技体」全部持ってるって。でもこれじゃ心技体予想術に当てはめれないんだよ！

　「おっと、そこの君勘違いしているな」

　あれ、空想博士が僕の目の前に。

　「博士、勘違いってなんのことでしょう。教えてください！」

　「勝つ選手は皆心技体を持っている。では負ける者はどうかね」

　「……(長考)。な、なんだと！？負けた者は心技体のどれかが欠けている！」

　「よし、君にも分かったようだな。これで君に教えることは何もない。では、またいつか会える日を」

　「待って！博士！なんとなくわかったんだけど、どうやってレース前に心技体を持つ者、持たない者見分ければいいんですか？」

　「あ、うん、あ、それは、あの、うむ。では、また会える日を」

　博士は超挙動不審に光の中に消えていった。

　まだまだ「心技体予想術」確立への道のりは長そうだ。

　まぁ、大体の感じですけども、僕の横に座るおじさんの予想術の解説でした。博士は明確な言葉は残していきませんでしたが、予想のヒントをくれました。負けるものを探すということもできると。勝つ者を予想することが多いですが、負ける者から予想を構築することもできると。

　いっちょ前に言ってみましたが、勝つ者だろうが負ける者予想は難しいです。でもたまに、心技体を基準に予想するの面白いですよ！




　あ、ごめんなさい。おじさんの買ったレースがそろそろ始まるようです。では、また今度。

　最後におじさんの買った車券の予想方法を教えてもらいましょうか。

　「おじさん、どうしてこの目の車券にしたんですか？まさか、心技体予想術？」

　「いや、サイコロ」