番手勝負と決めたなら、顔見せも外、本番も外で競る。そんな意固地なマーク屋を幾人か憶えている。
それとはまるで違うが、ちょっとだけ似た競輪が函館記念の初日にあった。
第十競走。顔見せから野口裕史が――いつものことではあるが――大そう気負っている(荒い鼻息の音が聞こえてきそうなぐらい)。ぐんぐんスピードを上げると、番手の小原太樹はしっかり追ったが、三番手の丸山啓一は完全にはぐれてしまった。おいおい大丈夫かいな。わるいが俺はくすり笑った。
本番は野口-小原-丸山で正攻法。赤板で伊藤慶太郎が押さえようとすると、顔見せ同様の気迫で野口が突っ張り先行、これまた顔見せとおなじく小原はぴったりマークも丸山は踏み遅れてしまい、三番手四番手に伊藤-柿沼信也が収まった。
顔見せも、本番も。
偶然の目撃者となった俺は、競輪に楽しませていただいた。
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