寺崎浩平が大石剣士を突っぱろうとした時、うん? と、ちょっとおどろき、二人の雁行を見ながら、そうか! と膝を叩き、山本(伸一)の優勝だけは勘弁してくれ、と声に出さずにつぶやいた。断っておくが山本が嫌いとかそういうのではない。こっちの作戦だったか! という悔いからつい出てしまった言葉である。
幾度となく近畿の先頭で闘ってきた山本と、冷静に考えれば寺崎はまだ新人なのだ。再度のブン逃げはあって当たり前ではないか。それを俺は準決の早逃げだけで、はい、決勝の寺崎は捲り、と即決してしまったのだから愚かしい。
山本の頭から寺崎と大石を切って……三十点で八万円かぁ……。三流ギャンブラーのボヤキは毎度のことだが、ここまで真逆を喰らうと、いくら阿房な俺でも、……競輪ちょっと休もうかしら……ブルーにこんがらがる。
本稿の題名は、ミュージシャン佐野元春が、メジャー・レーベルと袂を分かち、インディペンデント・レーベルを設立しての第一弾、『THE SUN』のリリース発表時にファンに向け放ったメッセージ〈あぁ、眠気が覚めた。活動開始だ。“Let’s rock and roll”〉から頂戴した。
翌日。
あぁ、眠気が覚めた。活動開始だ。“Let’s 競輪 and競馬”――。今日は近場の川口オートがやっている。ヒラ開催なのに随分混んでいるように見えるのは、そこかしこで改修中ゆえ、観戦場所が限られるからだった。一コーナーの金網付近に行くと、心地よい風が流れた。いつもの場所にいつもの猫が居た。ジャンパーの中年男が何かあげていた。最後にフライの切れ端を放ったが猫は食べかけてやめた。ジャンパーが去ると、今度はジャケットを纏った老人が皿にキャット・フードを盛り、切れ端を拾い紙片に包み、それから俺に言った。「猫にイカフライ食べさせるなんてナンセンスでしょう――」と。「――そうですよね」と俺は返した。考えてみれば、家人以外と直接こうやって人と会話するのは随分ひさしぶりで、すこし嬉しくなった。
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