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「その男、今日、坊主につき」

2014/07/27 7:09 閲覧数(988)
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その男は、言葉を失い、ただそこに立ち続けるしか無かった。

左手に、少しの汗と祈りを染み込ませた紙切れは、その瞬間に、ただの紙切れになった。

他の誰とも形を同じくしていない業界唯一のピンクの勝負服を身に纏うこの男が先頭でゴールする事は、もはや必然。あとは、その次に来るのが誰なのか、そしてその次に来るのが誰なのか・・・それをただ明確にすれば良いだけの話であったはずだ。
事前の想定通り、ここは絞れる。勝負に行ける。配当に応じて種銭を集中投下。
だからこそ、その男は言ったのだ・・・
「このレースを取れなかったら、この後の26期戦はもう一切買わない」と。

男は期待した。赤い勝負服の男が、2番目にゴールする事を。
男は期待した。オレンジの勝負服の男が、3番目にゴールする事を。
それは、このレースで最も支持を集めていた決着の方法でもあった。

その逆でも良かった。
見返りはそれ程では無かったけれども、少なくとも次に繋がる心の支えにはなったはずだ。

ただ、その紙切れにそれ以上の事は映っていない。
余白には彼らの名前が刻印された、大きく2行から成る紙切れだ。

いつだろう、その紙切れが意味を失ったのは・・・。

決定的だったのは、黄色の勝負服の男が、赤い勝負服の男を交わした時だったか。

間接的にはきっと、オレンジの勝負服の男が、遠目にも分かる程伸びを欠いていたと直感した時か。

より間接的にはきっと、赤い勝負服の男が、黒い勝負服のおと・・・いや、これは女だったか、しかも排気量が100だけ少ない・・・これに随分引っ掛かっていると直感した時か。

そんな事は、もはやどうでも良かった。
目の前で展開されている6周の勝負事には、もはや少しの望みを預ける事すら許されない、何かの間違いでも起こらない限りは。



そこからの1時間は、その男にとってはただ、ただ、誘惑との格闘、苦痛をいかに和らげるかに腐心するのみであった。

もう一切買わないと言った手前、財布の口は閉じたまま・・・否、開けようとすればいつでも開けられるし、いつでも種銭は取り出せる。マークカードを塗り潰す事も、それをスッと差し出す事も。

でも、その男は頑なに拒否した。

目の前で、26期の精鋭16名が熱戦を繰り広げている。
その男は、ただそれまでの傷を繰り広げるだけだろうと思いながら、勝負に出ることを拒否したのだ。

結果、それは戦略的に正しかったのか・・・それを知る由は無い。
人は、2つの相反する時の道を同時に通る事は出来ない。

正しかったと信じる事だけが、次の道を開く術となり得る・・・
その男は、それを心に刻み、レース場を後にするのだ・・・
2つのレースをスルーした事で、また明日も同じ場所に戻り、戦いに再び挑む権利を得たと、その男は思っているのだ・・・

そして、そんな男が書き留めるこの文章を見た誰もが思うであろう・・・

「何だこれ?」

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