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競輪があるから

2016/05/27 20:25 閲覧数(932)
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 ――記念競輪の優勝回数は九十九回を数える。選手生活二十九年目を迎えた神山雄一郎が、地元・宇都宮でメモリアルの記念競輪通算百V達成へ――。と某紙が書いていた。
 俺も「黒競」に一年、「青競」は二十八年目だから、競輪記者生活二十九年目となるので、ほんのりとした「同期」気分を許されたし。レジェンドの稼いだ賞金には桁違いに及ばない俺だが、路頭に迷うこともなく、何とか食えているのは“ツキ一本”のなにものでもない。
 眠気との闘いのような運転手稼業に耐えられたのは、競輪があったからだ。午前中だけのおそろしく単純な軽作業。定職にも就かずフラフラしていた数年も、競輪があるから大丈夫だった。
 結婚生活が破綻し、負のエナジーに困憊しているときでも、俺は競輪のことを考えていた。
 大ファンだった巨人軍のスタメンを言えなくなったのは、或る日を境に俺の過半を競輪が占めるようになったからだろう。
 競輪があるから、競輪があったから、住所不定・無職・低収入でも暗くならずにすんだ。
 颯爽と自転車をこぐ神山雄一郎の凛々しいフォームと、ドラマ「北の国から」の劇中、懸命に走る、中嶋朋子扮する蛍の体躯の傾きが、俺は好きだ。

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