音を消したテレビを点けっぱなしにしていたら、プロ野球の名選手列伝みたいな番組が映っていて、柴田勲(元巨人軍の選手)を扱った回らしかった。以前に見たような気もするけど何気なく注意が向いて音を出す。もう終了間際の雰囲気で柴田が野球について語っていた。野球はやさしく楽しくやらなきゃいけない。むずかしいコースはON(王貞治と長嶋茂雄)だって打てない。だから甘い球を打つ。ゴロはむずかしいバウンドを避けやさしいところで取る。野球でもどんなスポーツでもプレイしていて苦しくなるようじゃ駄目、楽しくなるように、やさしくできるようにしなきゃ。正確ではないかもしれないけどそんなような要旨だったと思う。けだし名言級である。
現役時代の柴田は少年達の憧れだった。トレードマークの赤い手袋を真似るはいいが、皮革のバッティンググローブなど買えない――どこに打っているのかもわからない――小僧たちは仕方なく赤色の毛糸の手袋を持って野っ原に集まった。
目からうろこが落ちたわけではないにしても、あぁ、やさしく楽しい車券。苦しくない、無理をしない車券と置き換えればいいのか。なぁんて下手な考えを巡らせていたら、うん? 昨年末のグランプリ、やさしく素直に買えば……もう一回二車単と三連単の配当を調べたりして。数日前の「たとえもう一回レースをやってくれたとしても、この車券(脇本雄太、古性優作、郡司浩平)は買わない、おそらく、きっと」と吐いた唾を飲み込む陳腐な転向者がひとり生まれそうになった。
元日は朝からストーンズを聴いている。
しかし、まぁ、「メインストリートのならず者」なる邦題の絶妙なることよ――。
五車だてのならず者を探しながら大垣競輪の放送を見ている。
五車だてなぞ競輪ではないわ――。と文句を垂れながら車券を買っている。
裏通りの車券好きの一年がまたはじまった。
謹賀新年、
読者の皆様、
今年もよろしくおねがいします。
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