すっかり車券に自信を失っている俺は、オールスター競輪がやってるというのに後楽園の馬券売り場に居る。昨日コンビニで競馬新聞を買った。いつもは「エイト」なのだがほんの気まぐれで「日刊競馬」を選んだのだが、受け取ったレジの女性がちょっと迷って入力するとディスプレイには「日刊ゲンダイ150円」と映った。百五十円ですのイントネーションが日本人のそれではなく、顔をちらと見ると浅黒い東南アジア系の美人だった。俺は安すぎるよと返し、彼女はもう一度レジの傍にあるバーコード用のファイルから「日刊競馬470円」を必死に探し出した。
大昔、競馬四季報など携帯するいっぱしの競馬ファンだった俺だが今やド素人、頼みの外国人騎手が札幌のメインも新潟のメインも駄目では勝てるわけもなく、関屋記念が終了した時点で諦め館外へ出た。東京ドームではアイドルのコンサートなのだろう。「関ジャニ」「JAМ」Tシャツの娘、美少年の写真が印刷された内輪を手にした娘がそこかしこに屯している。若い細胞の塊である娘たちと競馬帰りの草臥れた年配の男たちが擦れ違う。彼女らからすれば確実にあたしたちより先に死ぬであろうただの爺さんの集団だろう。気になることがあるとすれば俺たちが発する加齢臭ぐらいのものか。ま、仕方ない。順番なのだから。俺たちにだってあっち側の青春時代はあったのだから。
「とにかくフーを聴くと元気になるんです」と古市コータローが雑誌のインタビューで発言しているが、俺もギャンブルでやられたり、ツマラン現実にめげるとザ・フーを聴きたくなる。
部屋には「ライヴ・アット・リーズ」がうるさいくらいの音量で流れ、やっぱりワケノワカラナイ競馬(もちろん俺が競馬を知らないという意味です)より、競輪だな(もちろん俺が競輪をワカッテイルということではありません)。と、能天気な俺はやや盛り返し、明日は準決だしな、と呟くのだった。
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