八月二日はじまり四日おわりのいわき平FⅠで織られた物語について記す。
第一章――初日特選。シード選手七名による対戦だから《自動番組》みたいなもの。深谷知広には櫻井正孝-阿部力也で、この、深谷の後ろに北の選手という流れは、翌日、翌々日とつづくことになる。レースは豪快な終審カマシを打った深谷に櫻井が付いていけず、太田竜馬-岩津裕介が二三番手にはまり込んだ。きつそうな裸逃げにも見えたけれども、深谷が強い強い。視点を変えれば太田完敗の態であった。
第二章――二日準決。突っ張りありブロックありの橋本壮史-鈴木竜士がいいレースをした。深谷知広-飯野祐太-佐藤慎太郎はあぶなかったが、飯野の咄嗟の判断で橋本-鈴木の三番手に深谷を迎え入れ、最後の最後に届いた。深谷-飯野の二車単は190円、まさに危機一髪の一番人気だった。
第三章――三日決勝。深谷知広の番手は準決で組んだ飯野祐太で、三番手に初日一緒だった櫻井正孝だ。対する遠征は四人でまとまり晝田宗一郎-太田竜馬-岩津裕介-松川高大――いかにも対深谷――ブン回しの二段駆けが見える。深谷とて簡単じゃない。実際にお客さんもそう考えたのだろう、車券は太田と岩津の表裏から売れていた。蛇足ながら私もそれを買っていた。
さて本番。深谷-飯野-櫻井が正攻法、四番手から晝田-太田-岩津-松川が赤板目がけて叩きにゆくは必定であるから、残り二周が展開の分かれ目。下げたら深谷はそのあとをどう処する? 遮二無二巻き返しに行くか、息を整え一旦構えるか。
深谷は突っ張り先行だった。
赤板前の四角附近から、ああ深谷(晝田を)出させない気だな。そんな雰囲気が画面を通しても伝わってきた。昨日のピンチを招いた準決(後ろは今日と同じ飯野だった)のことも頭にあったろう。太田の番手捲りに対する危機感。更に後ろは北地区二人で番手は地元だ。彼らにも勝負権のある競輪をしなければ。
結果は飯野-櫻井のズブズブで深谷は五着まで沈んだ。
ゴールした九人の選手がゆるゆるバンクを流している。
深谷が飯野に近づき何か言った、飯野の肩にぽんと触れた、ように見えた。
《そこかしこ》の二流が似たようなことをやると、まあ様にならないこと多々であるけれども、深谷がやると妙にかっこういい。たとえ車券を――深谷の突っ張りに因り――やられていても「うんうん」と肯定する気持ちになるのは、決して刹那的ではなく、前二日の《縦と横の糸》から織りなされたストーリィであるのを理解するからである。
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