新宿の伊勢丹デパート側から通りを渡り花園神社の境内を歩いていると野外芝居の音が聞こえ、ちょっと得した気分だ。
背伸びがしたい二十歳前後の俺はアングラという言葉に惹かれた。不勉強で上っ面しか見えない餓鬼だから、恰好良い恰好悪いとアングラっぽいかそうじゃないが同義という安直さだった。中学のときギターを買ったのもアングラ・フォークの響きに影響されてだ。
ザ・ベルベット・アンダー・グラウンドというバンド名だけでアルバムを買ったこともある。
ピンク映画も日活ロマンポルノも競輪も俺にはアングラの匂いがした。
当時隆盛だった競輪というギャンブルのどこがアングラだと叱らそうだが、多種の妖怪みたいな客客客、まるで映画のセットのような食堂やコーヒー・スタンド等々、俺にとって競輪場はメジャーとは真逆の空間だった。
あの頃を想い出すのもむずかしくなった今の競輪だが、ま、それでも、案外、たいして本質は変わっていない気もするのは、俺が「競輪アングラ説」をとっているからか――。
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