今さっき終った福井FⅠの決勝は、寺崎浩平の一周カマシを清水剛志が二分の一車輪差しての地元ワンツーだった。ゴール後十数メートルいったあたりで、寺崎が清水のお尻をぽんと叩いて祝意を示した。清水はうれしいS級初優勝である。と、ここまで書けば、ああ、福井-福井だし寺崎が一肌脱いたのだろう。そんな感想をもつ人もいることだろうけど、そう簡単な話でもない。
初日の予選、貴志修己-清水の地元番組が組まれたが、なんと清水は初手から競られてしまう。何とか凌いだ清水だが、一時は貴志との車間がけっこう空いてしまう。それでも必死に追いかけ二分の一車輪まで迫った。奇しくも決勝の着差と同じである。
準決も貴志-清水の番組だった。ただ、三番手に高間悠平の数的有利をもってしても、別線に田中大我-小倉竜二と、坂本貴史-柏野智典では、けっこうきつい。が、貴志ががんがん駆けて清水はハコ絶好の一着クリアとなった。予選で貴志の後ろで競った(競られた)事実が、競ってもらった貴志のやる気に火を付けた。と思えば、まさに苦あれば楽あり、一寸した人情話にもなる。
決勝。近畿五人は分かれた。山田久徳-稲垣裕之の京都両者には岡山の柏野智典で、神奈川の佐藤龍二は単騎、地元は大阪の南修二を間にはさんで寺崎-南-清水と折り合った。格が違うから仕方ない。一車下げた清水はここまでと、誰もが、いや私はそう思った。
ところが。
翌日(決勝当日)南の欠場が発表されたのだ。
自動的に寺崎-清水の地元-地元が出来あがった。
むろん、だから勝てるなどと競輪は甘くない。しかし、一晩だったら六車の決勝に変わり、本命の番手に変わった。長嶋さんの和製英語を使いたくなるほどに、今回の清水の優勝はメイクドラマであった。
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