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金太郎飴みたいなブルースと競輪選手

2020/09/11 12:48 閲覧数(410)
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 ボブ・ディランの最新アルバムに『グッド・バイ・ジミー・リード』なる曲が収録されているのを知り、聴いて、それからジミー・リードの陽気なブルースをずうっと部屋に流している。ジミー・リードの音楽を「どこを切ってもおなじ模様の金太郎飴。」と鮎川誠がユーモアをこめて記しているとおり、ワンパターンの曲がずらり並ぶのだが、「そこがまた、なんともたまらないのだ」と氏と私の見解は一致する。
 先輩記者のEさんや、競輪選手のNさんから聞いた、競走はいつもおなじ、これ一本の技――プロレスでいえば吉村道明の回転エビ固めみたいなものか――のみで競輪界を生き抜いたプロフェッショナルたちの話はおもしろかった。考えたすえの競りの要領、イン切り駆使の作戦名手、競走得点計算の天才などなど……。地味~な昭和の中堅や万年B級の愛すべき選手のエピソードをときどきおもいだしひとり可笑しくなったりする。
 Eさんは、「Nは埼玉の高校野球じゃスターだったんだ」と教えてくれ、試合も何回か見ているらしく、詳しかった。
 京王閣競輪場の検車場でEさんとNさんが立ち話している光景を薄らと憶えている。前検日で周りがバタバタしているなか、二人だけ悠然としている画が私にはちょっとだけ誇らしかった。
 EさんもNさんも逝ってしまい、吉村道明もジミー・リードも鬼籍にはいり、良い意味で煮ても焼いても喰えない職人たちもとうに現役を退いた。
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