最終の第十二競走にはS班が三人。
昨年末の〈競輪グランプリ2020〉でガツンガツンと肉弾戦を演じた平原康多と清水裕友が一番車と二番車に居て、あれよあれよというまに九着を拾っちゃった? 郡司浩平は七番車だ。
一億円を賭けた闘走を引き摺っているそれぞれの思惑は……。などと空想するのは俺の悪い癖で、平原も清水も郡司も、なにごともなかったようにいつもの競輪をやるだけなのだろう。
三十年近く前、立川駅前のタクシー乗り場で偶然一緒になったKさんは、「記者さん、オレ立川の前にはかならず寄る神社があるのでひとりで失礼します――。」と俺に云い、先の車で行ってしまった。数十分後、検車場で会った。さっきはどうもという感じで挨拶を交わした。どういった験かつぎなのかは聞かなかった。よく話をするようになった時にはもう、K選手はB級のベテランだった。一回こんなことがあった。出来たばかりの番組を見せに行って、61点ぐらいの自力屋が一応筋の目標に居ますと俺が云うと、この点数はもう選手じゃない、クビになっちゃう数字の人にはマークしない。だいたい逃げたって半周がいいとこだから――。
昔も今も今期が最後だからと矢鱈先行一本の選手が居る。昔も今も「その後ろ」を買ってやられる俺が居る。やられてKさんの云うとおりだなぁと懲りない俺もいる。
チャレンジ制度導入が発表された時俺はKさんに「こりゃ九連勝特昇がガンガン出るでしょう――」と云ったが、「B級だってそんなにヤワじゃない。そりゃ脚だけでブッ千切っちゃうのは何人か居るだろうけど、新人と何十年もやってるプロが闘うんだから、簡単には勝てないとおもうよ、オレは――。」と、やんわり否定された。
Kさんのことを記していたら、何故の連想かH選手の顔が浮かんだ。
Hさんは後輩に厳しい選手で、俺が談話を取りたげにウロウロしていると、記者さん誰探してるんだ? いや、今昼寝しちゃってるみたいなんですよ。わかった。オイ何某、インタビューだよ! と、起こしてしまった。Kさんもそうだが、Hさんは毎レースよく競走を見ている人で、一緒になるとよく俺に持論を説いた。こういうのが競輪を駄目にする。ここは捨てる。ここは捨てちゃ駄目。あそこで内じゃァみっともないだけ……。
いつしかHさんは記者間で「一人競輪道」と呼ばれるようになった。
KさんもHさんもお元気にしていらっしゃるだろうか――。
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