テレビ中継で某選手がはにかみながら勝利者インタビューを受けていた。某ももう四十九歳、落ち着き払った受け答えがいかにもベテランの風情だった。
某の母親から会社によく電話が掛かったのは二十五年以上前、某はデビュー三年か四年のS級選手で、俺はまだ〈黒競〉在籍だった。当紙発行場所に遠征している某の競走が終わって三十分くらいで電話が鳴り、会話の内容は判で押したようにおなじだった。――いつもお世話になっております競輪選手某の母親ですが、第○競走の某が落車していないかどうかだけ教えて貰えないでしょうか? 当時はインターネットなど普及しておらず、結果の速報といえば、単純に枠番の出目だけを教える簡易なテレフォン・サービスが関の山だったから、矢も楯もたまらない心地で受話器を取るのだろう。
着順なぞ尋ねない。一心に息子の無事だけを案ずる母の電話を忘れないでいる。
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